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「香港問題」は公約違反の国際問題~国家安全維持法が施行

人民中国建国以来の重大局面にどう対応するか

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

拡大香港のデモで警察官に連行される参加者の女性(中央)=2020年7月1日

 香港の返還記念日(7月1日)の前日、「香港国家安全維持法」(国安法)が施行された。記念日恒例の集会やデモを封殺するために間に合わせたのだろう。

 これを受け、香港政府当局は、抗議のために街頭に出た1万人を越える市民に対し、施行されたばかりの法律を適用し、10人を逮捕、約300人を拘束した。

 昨年の「逃亡犯条例改正案」をめぐる「200万人デモ」、さらに区議会選挙での民主派の圧勝によって、香港の市民たちは、中国政府が今度こそ牙をむいて向かってくることを承知している。このまま9月の立法会選挙を迎えれば、民主派が圧勝しかねないからだ。

 中国政府として、それを事前に粉砕するための“装置”が国安法であり、それに対応する「国安護持公署」である。くわえて、今まで英国譲りの独立性を誇ってきた司法も、行政長官が裁判官を任命することになり、北京政府の意のままになった。

拡大「国家安全維持公署」の看板=2020年7月8日、香港

沈静化しつつある民主派の行動だが……

 香港の民主派は、中国政府が今後、容赦なく彼らを弾圧する気配を感じ取っている。「香港独立」を掲げる団体をはじめ、民主派の国体が急きょ、相次いで解散した。さらに、「雨傘運動」以来の若手の指導者たちも亡命したり、運動を離れたりすることを宣言するに至っている。

 7月1日の見せしめの拘束、逮捕が効を奏したのか、民主派の行動はその後、日を追って沈静化しつつある。

 国安法の核心部分は、①香港独立②政権転覆③テロ行為④外国勢力との結託、に関与する人を処罰の対象としているところにある。集会やデモは「テロ行為」と見なされる可能性があり、外国人記者の取材を受けることさえ、外国人勢力との「結託」になりかねない。

 しかし、香港市民、特に民主派の青年たちはしぶとい。自由と民主主義への思いは筋金入りだ。毎日新聞の報道によると、1日のデモに参加した女子学生(22)は「怖いが、怒りを我慢できず、ここに来た」と言い、他の女性(28)は「私たちの民意を踏みにじる中国政府のやり方は絶対に許せない」と憤慨している。

 ごくふつうの市民が捨て身の行動をいとわない香港。国安法のあおりで、いったん退くことがあっても、いつの日か必ず再起して、魅力的な香港を復活させるだろう。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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