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COVID-19パンデミックでも守られるべき妊娠と人権

ナタリア・カネム 国連事務次長 兼 国連人口基金(UNFPA)事務局長

拡大UNFPAから派遣された医療チームによって診察を受ける妊婦(コンゴ民主共和国) ©︎2020Siaka Traore/UNFPA DRC

※この記事は日本語と英語の2カ国語で公開します。英語版でもご覧ください。

望まない妊娠に直面する女性が急増

 各国がロックダウンを導入したり、COVID-19対応のため保健システムに負荷がかかり性と生殖に関する健康サービスが制限されたことによる直接的な結果として、COVID-19は、世界中の女性と少女に甚大な被害を引き起こしている。危機が深刻化するにつれ、家族計画のサービスにアクセスできなかったり、望まない妊娠、ジェンダーに基づく暴力やその他の有害な慣習に直面する女性の数が、今後数カ月で急増する可能性があるのだ。

 性と生殖に関する健康分野で活動する国連人口基金(UNFPA)が行った最近の調査では、移動制限が6カ月間続き、保健サービスに関する深刻な崩壊が起きた場合、低・中所得国の4700万人もの女性が近代的な避妊具・薬を入手できなくなり、700万もの望まない妊娠が起こる可能性があることが強調されている。現場で実施されていたUNFPAの事業が中断され、2030年までに、本来なら回避できていたはずの200万件の女性が性器切除の被害にあい、1300万件の児童婚が発生する可能性がある。

 また移動制限措置が6カ月間延長されるごとに、最大で3100万件のジェンダーに基づく暴力が、新たに発生すると予想されている。こうした暴力に対する予防や保護の取組みや、社会サービス・ケアが減少しているのに加え、多くの女性が虐待者と一緒に緊張が高まった家に閉じ込められている。日本では、全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた今年4月の相談件数は1万3223件となっており、これは、前年同月の1万295件から、約3割の増加となっている(注)

(注)暫定値 出典:内閣府「共同参画」2020年6月号

懸念される「”陰”のパンデミック」の悪化

 これは現在のほんの一部を捉えたにすぎず、私たちが「”陰”のパンデミック」と呼んでいるものは、今後さらに悪化する恐れがある。COVID-19によって、この10年間に成果をあげつつあった予防可能な妊産婦の死亡率減少、家族計画のアンメット・ニーズ、ジェンダーに基づく暴力、そして女性や少女に対する有害な慣習を終わらせるための世界的な取組みの成果が、少なくとも3分の1程度は後退するだろうと、UNFPAは予測している。

 一部の先進国ではCOVID-19の感染拡大は減速してきているが、パンデミックの前に既に保健システムが破綻しかけていた国、人道的危機が長期化している国など、開発途上国の一部では感染は急速に拡大している。

 世界中のUNFPAスタッフは、性と生殖に関する健康サービスへのアクセスを確保し、助産師などの必要不可欠な労働者を守るために、24時間体制で働いている。また、私たちは、ジェンダーに基づく暴力の危険にさらされている女性や少女を守り、COVID-19に対する準備・対応計画にジェンダーに基づく暴力への対応のための必要なサービスを含めるようロビー活動を行い、望まない妊娠を避けるために近代的な避妊具・薬を広く利用できるようにするため、私たちの果たすべき任務も果たしている。

拡大COVID-19危機下で不足する避妊具・薬、個人防護具(PPE)などの物資供給に奔走 ©︎2020 Tomislav Georgiev/UNFPA MK

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筆者

ナタリア・カネム

ナタリア・カネム 国連事務次長 兼 国連人口基金(UNFPA)事務局長

コロンビア大学とジョンズ・ホプキンス大学の医学部と公衆衛生大学院で研究者としてキャリアをスタートし30年以上、医学、公衆衛生及び性と生殖に関する健康、社会正義、社会奉仕事業分野において指導的立場で活動。1992年から2005年 にかけてフォード財団に勤務、西アフリカ代表として女性の性と生殖に関する健康やセクシュアリティ分野における先駆者として尽力。その後、アフリカ、アジア、東ヨーロッパ、南北アメリカで世界平和と社会正義を促進するプログラムを総括する副代表をつとめる。2014年から16年までUNFPAのタンザニア代表を務め、16年7月にプログラム担当の事務局次長に就任。17年10月3日から現職。