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看過できない香港問題 日本外交は対中政策を転換せよ

人権国家として存在感を示すため、日本版・グローバルマグニツキ法の制定を提案する

山尾志桜里 衆院議員

人権侵害は国際問題であり内政干渉ではない

 香港問題について意見を表明する場面では、「内政干渉の反論をいかに封じるか」という問題が常につきまとう。

 あまりに多数の「非道さ」が存在するから、非難のロジックには様々なバリエーションがある。自由を奪っているから。人権を侵害しているから。香港の自治や民主主義を害しているから。法の支配・法治主義に反するから。英中共同声明に反するから。世界人権宣言に反するから。構築された国際秩序に反するから……。

 どの理由にも一定の理があるが、私自身は、いかなる国家も自由及びその自由を法的に裏打ちする基本的人権の侵害は許されないこと、そしていかなる国家も自らが当事者である国際約束の違反は許されないこと、という二つの理由が特に重要だと考えている。

 第一に「自由・人権」を置いた理由。それは、特定の国家における人権侵害、とりわけ国家による自国民に対する人権侵害については、その国の内政による治癒がおよそ期待できない以上、国際社会が声をあげる以外の選択肢はないからだ。

 もし、こうした侵害について国際社会が声を上げなければ、一体だれが声をあげるのだろうか? 国際社会が行動せずに、どうやって「包括的な世界人権ガバナンス」を形成するのだろうか?

 実はこの「包括的世界人権ガバナンス」という言葉は、中国の習近平・国家主席の言葉だ。ここに、世界人権宣言70周年における習主席のメッセージを引用しよう。

 「中国国民は各国の人々と共に平和・発展・公平・正義・民主・自由という人類共通の価値観を堅持し、人の尊厳と権利を守り、より公正で合理的かつ包摂的な世界人権ガバナンスの形成を後押し、人類運命共同体を共に構築し、世界の素晴らしい未来を切り開くことを望んでいる」

 価値観の順序には各国なりの温度差があるだろう(日本だったらこの六つの価値をどの順番で並べるだろうか。おそらく中国とは順序が変わるはずだ)。「個人の尊厳」ではなく「人の尊厳」としているのも、中国なりの哲学が看てとれる(たとえば欧州は「個人の尊厳」より「人間の尊厳」という概念を上位に置く場合がある)。各国家それぞれの歴史的・文化的・政治的な背景と、それに基づく価値観のグラデーションは尊重されて当たり前だ。

 しかし、習主席のメッセージにあるとおり、少なくとも中国も含めた人類共通の価値観の中には「自由」が含まれており、人の尊厳と権利を守るためには、包摂的な世界人権ガバナンスの形成が必要なのだ。

 国家による自国民に対する人権侵害は国際問題であり内政干渉の反論は当たらない。このことを私たち一人ひとりが自らの胸に、自らの言葉で落とし込むときだ。そうしなければ、7月1日の記者会見で質問された「日本の国会議員のどれ位の人が、内政干渉という反論に再反論できるのか」という懸念は、永遠に払拭されないだろう。

拡大香港国家安全維持法を公布するため署名する林鄭月娥行政長官=2020年6月30日、香港、香港政府提供

国際約束違反を制御するのは国際社会の役割

 第二の理由に、私は「自らが当事者である国際約束違反は許されない」という点をあげた。

 先に書いたように、国家間には価値観のグラデーションがあって当然だ。それでも、人が1人では生きていけないように、国も単独では機能しない以上、価値観の違う国と“大喧嘩”にならないように関係を管理していく必要がある。その管理のための対話の知恵は、やはり「考えに違いはあっても、お互い納得して決めた約束は守らなければならない」という説得だろう。

 中国自身が賛成した世界人権宣言(1948)、そして自身が当事者である英中共同声明(1984)という二つの国際約束に違反する振る舞いを中国は自制すべきであり、自制が望めないときは国際社会が制御役を担わなければならない。

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筆者

山尾志桜里

山尾志桜里(やまお・しおり) 衆院議員

宮城県仙台市生まれ。小6、中1の多感な時期に初代「アニー」を演じる。東京大学法学部卒。司法試験に合格し、検察官として、東京地検、千葉地検、名古屋地検岡崎支部に着任。民主党の候補者公募に合格し、愛知7区から国政に挑戦、2009年に衆議院議員総選挙に初当選。14年に2期目当選。16年3月の民進党結党に際して政務調査会長に就任(~9月)。17年9月に民進党を離党し、同10月に無所属で3期目当選。現在、国民民主党に所属。著書に『立憲的改憲――憲法をリベラルに考える7つの対論』。

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