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「保革」「左右」を超えた野党再編の対立軸は何か/上

近代日本を貫く「大日本主義」と「小日本主義」

田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授

 2020年7月の東京都知事選挙は、小池百合子知事の圧勝の裏で、30年にわたる野党再編が終わりつつあることを示していた。多くの主要な野党議員が自らの判断で、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児候補を推したからだ。支援を党議決定した立憲民主党、日本共産党、社会民主党に加え、小沢一郎議員、中村喜四郎議員、岡田克也議員、野田佳彦議員、原口一博議員、平野博文議員ら、保守系あるいは連合系と呼ばれるベテラン議員が、宇都宮候補を支援した。

 これは、一見すると左翼的と思われる候補と政策であっても、これら保守系議員にとって共闘できる範囲にあることを明確に示した。従来であれば、支援せず、静観したと考えられる。なぜならば、彼らの選挙区は都外にあり、勝利の見込みの薄い選挙であり、所属政党・組織の支援決定もなく、支援する必然性・メリットに乏しかったからである。

 さらに、野党議員の間で漠然としつつも「理念の軸」が共有されつつあり、それが従来の「保守・革新」「右派・左派」の軸を超えようとしていることも示している。その「理念の軸」に宇都宮候補の政策が合致したからこそ、ベテラン議員たちは自らの判断で支援をしたと考えられる。

拡大宇都宮健児氏(右)の応援演説をする野田佳彦前首相=2020年6月28日午後、東京・銀座

「理念の軸」による結集で野党再編が終わる

 野党再編が終わりつつあるとの認識は、この「理念の軸」による結集が進みつつあることから導き出している。1989年の「連合の会」から始まった野党(自由民主党以外の政治勢力)再編は、1994年の新進党、1998年の新・民主党、2016年の民進党など、政党や議員の諸事情に基づく離合集散であった。だが「理念の軸」による離合集散には程遠かったのが現実だ。その最たる再編劇が、2017年の希望の党騒動だろう。

 さらに、共産党と「理念の軸」を共有しつつあることも、野党再編の終わりの兆しである。「確かな野党」として、他の野党との国政での共闘をしてこなかった共産党は、今では共闘を当たり前にしている。共産党はかねてより、暫定的な連立政権に加わる用意があると表明する一方、政策の一致を重視し、実際にはパートナーを得ていない状況であった。それが変化したのは、間違いなく「理念の軸」を共有しつつあるからだ。

 それにより、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・社会民主党などの野党議員たちは、いわば「野党ブロック」という勢力を形成している。1999年から自由民主党と公明党が「与党ブロック」という勢力を形成しているのに対し、約20年遅れて、もう一つのブロックが形成された。ここでいうブロックとは、一定の政策方針と協力関係を共有する複数政党の勢力のことである。

 それでは「野党ブロック」の「理念の軸」とは、何か。残念ながら、当事者も含めて、まだ誰も明快にそれを示せていない。筆者も、拙著『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館)で試みたものの、端的に示せたとまではいえないだろう。

 そこで本稿では「大日本主義」と「小日本主義」という歴史的な対立軸を用いて「野党ブロック」の「理念の軸」を考察する。与党ブロックのリーダーである安倍晋三首相が、長州出身の祖父で、東条英機内閣で国家総動員を担うほど「大日本主義」の立役者であった岸信介元首相を尊敬していることから、一つの手がかりになると考えた。

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筆者

田中信一郎

田中信一郎(たなか・しんいちろう) 千葉商科大学基盤教育機構准教授

博士(政治学)。国会議員政策担当秘書、明治大学政治経済学部専任助手、横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、内閣官房国家戦略室上席政策調査員、長野県企画振興部総合政策課・環境部環境エネルギー課企画幹、自然エネルギー財団特任研究員等を経て、現在に至る。著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』『信州はエネルギーシフトする』、共著に『国民のためのエネルギー原論』『再生可能エネルギー開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック』などがある。

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