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「小池都政」二期目を左右する意外なプレイヤーとは?

都知事選の結果を分析し、来年の都議選の行方を展望する

与謝野 信 ロスジェネ支援団体「パラダイムシフト」代表

 7月5日投開票の東京都知事選は現職の小池知事が366万票を獲得して他の候補を圧倒し再選されました。NHKの出口調査では小池知事が幅広い支持を得たことに加え特に自民党・公明党・無党派層からの支持が高く、評価された最大の政策はコロナ対策だったことが報じられています。

 二期目の目下の課題は引き続きコロナ対策と来年に延期されたオリンピック・パラリンピックの開催です。都の貯金に当たる財政調整基金をほぼ使い切ってしまっている上に税収の大幅な低下が予想される中、今後四年間は政策実行のための財源確保が最大のテーマになりそうです。

 地方自治体は国のように大量の赤字国債を発行してコロナ対策の財源にするようなことは難しく、東京都独自の財源で大規模な財政出動をするにも限界があります。(参照記事『都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴』)

 ですので適切な政策に紐付けした国からの財政支援を取り付ける必要があります。またオリ・パラの開催もコロナの影響で一筋縄ではいかない状況です。規模の縮小・中止などもあり得る状況でここでも政府との連携が重要になります。

 こうなると地方政治の典型的なボトルネックである「結局国政にある程度の影響力を持たないと、首長といえども政策実行の自由度が極めて狭くなる」という問題に当たってしまいます。東京都独自の財政出動をしたい場合でも国から地方への特別給付などの支援が必要ですので、国政への影響力が一期目以上に必要となるでしょう。

 現在の都議会は知事与党である都民ファーストと公明党だけで過半数を制していますので議会運営上行き詰ることはありません。しかし来年に予定されている都議会議員選挙で二党の勢力が過半数を下回ると、一転して議会の承認を得るための丁寧な都政運営が求められます。

 二期目の小池都政にとってスムーズな運営のための重要な課題は

1. 自民党政権と良好な関係を築き、有効なコロナ対策や五輪対策を打ち出すための財政支援を取り付けること
2. 引き続き都民ファーストと公明党による知事与党の議会運営の主導権を握るために、来年の都議選で都民ファーストの現有勢力を維持すること

 という二点になるのではないでしょうか。

 小池知事が国政への影響力確保を目指し、任期途中でも国政への復帰や再参入などをする可能性も出てくると思われます。

東京都の小池知事

 もっとも一部でささやかれている自民党への復帰の可能性は低いと思います。小池知事としては国政復帰するなら首相を目指せる環境を求めるでしょうし、一方で自民党が小池知事を総裁に担ぐメリットは全くありません。また希望の党の一件があるので国民民主党や立憲民主党と組むのも現実的ではありません。国政復帰時にパートーナーとなりうるのは今までのところ関係がそこまで悪化していない維新の会くらいではないでしょうか。

都知事選と都議補選結果の評価

 都知事選の開票結果と同日に行われた都議会議員補欠選挙の結果を見て、政党側の今後の政局を睨む動きもあり、様々な評価・論評がネット上でも飛び交っています。

評価1 野党共闘は失敗だった?

 今回の知事選では、共産・立憲、れいわ、維新がそれぞれの候補を立てて分裂しました。結果は三候補合わせても211万票で、366万票の小池知事には全く及びませんでした。

 しかしこの数値だけ見て国政選挙の動向を探るには無理があります。そもそも自民党は独自の候補者を擁立しておらず、小池知事の勝利が自民党を含む政党に対する評価として何を意味するのかは明確ではありません。同様に都知事選において三候補の得票率を参考にしても、そこから野党各党にとっての国政選挙に対する戦略がなにか見えてくるとはあまり思えません。

 国民民主党の玉木代表は「立憲民主党などが主導する従来の「野党共闘」路線は、次期衆院選では通用しない」との見解を示しました。(参照記事『国民・玉木代表「野党結集すれば何とかなる状況は終わった」』)

 都知事選での共産・立憲、れいわ、維新の三候補の得票率はそれぞれ14%、11%、10%と低い水準でばらけました。この数字を見ると立憲、国民、共産で共闘しても、れいわと維新が出てくると野党が三つ巴になって票が分散するというロジックが見えてきます。

れいわ新選組の山本代表

 しかし実際は衆院選での野党共闘にこのロジックが活かせない理由があります。

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