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「日本沈没」寸前! 新たな「社会契約」で日本の再構築が必要だ

神津里季生・山口二郎の往復書簡(8)

山口二郎 法政大学法学部教授(政治学)

 連合の神津里季生会長と法政大学の山口二郎教授の「往復書簡」。今回は、7月9日に「公開」した神津会長の「新型コロナを契機に社会変革 日本を救うのは『排除』ではなく『包摂』」への山口教授の返信です。

連載・ 往復書簡 コロナ危機と政治 神津里季生・山口二郎

拡大会談前、撮影に応じる立憲民主党の福山哲郎幹事長(左)と国民民主党の平野博文幹事長=2020年7月15日、国会

 今回の神津さんの書簡「新型コロナを契機に社会変革 日本を救うのは『排除』ではなく『包摂』」も興味深く拝見しました。

 現実の政治に関われば、状況判断を誤り、人間に対する評価を間違うことは避けられません。私も、20年にわたって今の立憲民主党や国民民主党とその前身の政党を応援してきましたが、失敗は山ほどあります。大事なことは、失敗を認めて軌道修正を図ること、そして投げ出さないことです。

 政権交代を担う対抗政党(opposition party)の創造は私の一生のプロジェクトです。日本語で野党というと、政府に文句ばかりつけている頼りない政党というイメージが付きまとうので、あえて対抗政党という言葉を使います。

 民主党政権崩壊後、対抗政党の構築は賽の河原の石積みといった状況ですが、ここで諦めては何のために生きてきたのかわかりません。

コロナの恐怖とメディア、政府の役割

 神津さんが先の書簡で指摘されたとおり、得体の知れない恐怖は、為政者にとって権力を保つための格好の道具です。自分たちの生活を脅かす魔物は、「ユダヤ人」、「移民」等だと断定し、人々の恐怖を憎悪に転換することができれば、全体主義の支配を立ち上げることができます。

 ソーシャルメディアが発達した今、恐怖を煽(あお)ることはいっそう容易になっています。全体主義は決して1930年代の昔話ではありません。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という俚諺(りげん)がありますが、恐怖をもたらす源の正体を明らかにするのは、学者やメディアの仕事でしょう。

 新型コロナウィルスについては、ワクチンや治療薬が開発されるまで、恐怖はなくなりません。しかし、感染の抑え込みに成功した国々の例にならい、感染の実態を明らかにして、的確な対策を立てるのは、専門家と政府の仕事です。しかし、今の政府を見ていると、経済回復を急ぐあまり、感染対策を後回しにしている感があります。

 1兆7千億をかけた「GoToキャンペーン」などはその典型です。現状で、気楽に旅行に行きたいと思う人が、一体どれだけいるのでしょうか。観光業界の支援は感染が落ち着いてからでよいと、大半の国民は考えるはずです。

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筆者

山口二郎

山口二郎(やまぐち・じろう) 法政大学法学部教授(政治学)

1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。主な著書に「大蔵官僚支配の終焉」、「政治改革」、「ブレア時代のイギリス」、「政権交代とは何だったのか」、「若者のための政治マニュアル」など。

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