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河井夫妻逮捕直後の首相会見への嘔吐感

[195]衆議院議員宿舎、安倍首相会見、沖縄「慰霊の日」式典……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

記者たちの質問に、荒涼たる政治報道の光景をみた

6月18日(木) 新聞各社も、NHKも朝6時のニュースから「河井夫妻を今日逮捕へ」と横並び。奇妙な感じ。横並びは好きではない。テレ朝の「モーニングショー」で、映画館「アップリンク」のパワハラの件を「独自」のワッペンを貼って報じていた。すぐに自宅を出て、赤坂の衆議院の議員宿舎前に寄ってから局でカメラクルーと合流して再び宿舎前へ。かなりの数のカメラマンおよび記者、リポーターらが蝟集する。ちょっと密だ。きのうから徹夜体制で張っている。出入りの車をいちいちチェックする。

 12時51分にそれらしい白っぽいワゴン車が出ていったが、黒窓で誰が乗っているのかわからず。13時49分にも黒い大型バン。これも誰が乗っていたか確認できない。そうこうするうち旧知のIさんから「地検に入った情報。ほんまかどうか?」と関西弁のショートメールが入り、すぐに「地検の中に入ったようなんやが、逮捕はまだかも?」と続報が入ってきた。あらら。いつ出ていったのだろうか。空振りか。と思ったら、14時46分、NHKで河井夫妻逮捕のニュース速報が出たという。僕らの近くにいた女性リポーターが「河井容疑者が逮捕されました」とリポートしている。そうか「容疑者」に切り換わるのか。

前法相の河井克行容疑者を乗せ、東京拘置所に入る車両。カーテンで仕切られ、後部座席の様子は分からなかった=2020年6月18日午後4時52分、東京都葛飾区拡大前法相の河井克行容疑者を乗せ、東京拘置所に入る車=2020年6月18日

 すぐに検察合同庁舎に移動すると、車両出入口に黒山の人だかり。報道陣が集まっていた。今度は東京拘置所への「出」を撮るためだ。みるとMBS(毎日放送)のMさんがいた。Mさんも5時間以上議員宿舎の前で張っていたそうだ。法務行政のトップにあった前法務大臣を、配下にあった検察が逮捕するなど前代未聞の出来事だ。でも何だか、シナリオ通りというか、予定調和感が拭えない。「検察の威信をかけた捜査が始まります」と同僚が生中継でリポートしていたが、検察の「威信」なんか実はとっくに崩壊しているのではないか。

 局に戻って、安倍首相の記者会見を聴く。わずか3時間半前に逮捕された河井克行「容疑者」を、首相補佐官として重用し、かつ法務大臣にも任命したその張本人が安倍首相である。記者会見にぜひとも立ち会いたかったが、それも叶わず、やむを得ずテレビをチェックしていた。

 首相は冒頭わずか1分ほど、河井前法相逮捕について「かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております。国民のみなさまに深くお詫び申し上げます(ここで軽く頭を下げた。プロンプターにそう書かれていたのだろうか)。この機に国民のみなさまの厳しい眼差しをしっかりと受け止め、われわれ国会議員はあらためて自ら襟を正さなければならないと考えております」とスピーチライターの作文通りの文言を、プロンプターをみながら読みあげていた。だがすぐに新型コロナウイルス対策の話に移行していった。それも「コロナ対応の150日間」を自賛するようなぬるい内容だった。

記者会見の冒頭、前法相の衆院議員・河井克行容疑者と妻の参院議員・案里容疑者の逮捕について陳謝する安倍晋三首相=2020年6月18日拡大記者会見の冒頭、前法相・河井克行容疑者と妻の参院議員・案里容疑者の逮捕について陳謝する安倍晋三首相=2020年6月18日

 当然、記者たちからは厳しい追及があると思っていたが、そう考えていた自分がバカだった。

 幹事社のフジテレビの記者の質問。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『抗うニュースキャスター』(かもがわ出版)、『漂流キャスター日誌』(七つ森書館)、『筑紫哲也『NEWS23』とその時代』(講談社)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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