コロナ禍、景気後退、内閣改造への批判、「黄色いベスト」デモの復活……課題山積
2020年07月18日
コロナ禍にもかかわらず、フランス共和国の建国記念日ともいうべき7月14日(革命記念日)、恒例の三大行事である軍事行進と官民合同による大統領のテレビ生中継インタビュー、そして花火が実施された。国の最大、最重要の行事を実施することで、3万人の死者を出しながらも、国家がつつがなく機能していることを示すことは、国民にとって最高の効能ある妙薬なのかもしれない。
7月14日は、日本では名画「パリ祭(原題は7月14日)」(ルネ・クレール監督)の影響もあって、「パリ祭」の名称が定着し、シャンソンとワインで浮かれる日との誤解があるようだ。
今年はコロナ禍で密集を避けなければいけないため、行進は国民議会(下院)からコンコルド広場までに短縮された。上空では、ラファルなどの戦闘機が減る一方で、医療活動に携わった救援機やヘリが参加。コンコルド広場の仮設観覧席には、コロナで不眠不休の看護に当たった医療関係者の代表が招待され、行進にも医療関係者が数10人参加した。
1940年6月18日のレジスタスへの「呼びかけ」、44年8月25日の自由解放に加え、戦後の国連常任理事国の地位と抑止力としての核保有を基盤にしたフランスの独自外交構築などの主要な業績が、当時の白黒のテレビニュースによって具体的に紹介された。とりわけ冷戦中は、米ソどちらの陣営にもくみさない外交力が、一種の歯止め的役割を果たすなど威力を発揮したが、世界中が中国の脅威にさらされている今、ド・ゴールの外交を噛みしめる必要がありそうだ。
こうした“軍国主義”や壮大な“無駄遣い”を批判するメディアは、左派系を含めて皆無だ。年に一度の盛大な祝祭を通して、フランス人が国是の「自由、平等、博愛(連帯)」を再確認し、フランスが強い意志に裏打ちされた民主主義国家であり、外敵に対して防衛可能な独立国家であることに満足し、安堵するからだろう。とすれば、コロナ禍の今年は、特に意義があったわけだ。
今年の例外は、式典の最後に、ヒナ壇に並んだ大統領や閣僚から、医療関係者に対して長く盛大な拍手が送られたことだ。3カ月間の「外出禁止」(罰金、禁固の罰則あり)という長くて厳しい措置に耐え、約3万人の死者を出しながら、国民が何とか団結してコロナ禍を乗り越えたのは、医療関係者の奮闘があってこそとの感謝が、そこには込められていた。
ただ、マクロン大統領の生中継インタビューに対しては、メディア、つまり国民からの批判が相次いだ。
実はマクロンは2017年の就任当時、「7月14日のインタビューはなし」を宣言している。今年はコロナ禍という未曽有な国難と、7月初旬の内閣改造、残り在任日数「600日」という節目の時を迎え、慣例を復活させる必要があった。
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