コロナ禍のなかで「まちおこし」の新たな日常に取り組む鯖江の若者たち
「ITの街」鯖江の自信とこれまでの取り組みが結びつきオンラインでコンテスト開催へ
曽我豪 朝日新聞編集委員(政治担当)
つながりは途切れさせられない! オンラインで開催へ
返信メールにこうあった。
「4月の頭、今年度の市内で開催されるイベント等の日程や実行委員会が立ち上がるタイミングで、福井県内の新型コロナ感染者数が人口比率で全国ワースト1になり、次々とイベント中止が決定していきました」
「そんななか、全国から学生を集めるというプランコンテストも当然『中止』という雰囲気でしたが、中止にするという考えは全く持ちませんでした。理由は、これまで12年築き上げてきた学生同士のつながり、そして学生と地域とのつながりを途切れさせるわけにはいかないと思ったからです」
「また、withの大学生たちも家に引きこもる日々を過ごしており、例えオンラインでも『開催する』と決めることで、それに向けて共にディスカッションをしたりと『動く』事ができると思いオンラインで開催することにしました」
すでに頭を切りかえていた若者たち

今年6月にはオンライン開催に向けてトライアル(模擬練習)が行われた。反省点、改善点を出し合い、新しいアプリも開発する。
「一緒に新しい次世代型地方創生モデル、新しいプランコンテストを創ろうと話すと、若い子達がワクワクしてすごく前のめりになってくれます。若い人たちを巻き込むときに、大人の考えを押し付けるのではなく、いかに『一緒に創る』という姿勢が大事か再認識しています」
やはり現場の声を聞かないと、本当のところは分からないと思った。
これまでの日常を取り戻せるかどうかより、新たな日常をつくり出せるかどうかの方が大切なのだ。さらに、これまでの取り組みの本当の良さを皆で考え直す機会に出来ればもっと良い。鯖江の若者たちはすでにそんな風に頭を切り替えているのだろう。
それでも、新たな取り組みには試行錯誤もあるに違いない。その様子を知りたくて、緊急事態宣言解除後、東京を中心に再び感染者数が増加し出した7月の初め、zoomを利用して竹部さんに話を聞くと、既にトライアルという模擬練習を2回やった時点で幾つかの「気づき」があった。学生たちとの反省会から改善策を準備中だという。以下は彼女の話。

zoomはこんな感じ。ただ問題点も指摘され、ディスコードも使用することに。
学生が市民と出会う接点を作るという原点は残す
zoomの性格上、定められたプレイルーム間の移動が出来ない。他のチームの議論の様子が分からず、どうしても自分の世界に入り込みがちになる。これまでもネットを利用した取り組みで起こりがちな弊害だったから、別のアプリを使うことにした。ゲームの世界ではお馴染みのディスコードというアプリで、これならチーム間の移動も容易に出来る。
さらに、本来コンテストの勘所である鯖江の街の人々の生の声を拾う作業が十分に出来ない不安があった。それで新たなアプリを開発することにした。ネット上に鯖江の地図が現れ、興味のある場所をクリックすると、市民のインタビューなど動画が流れるシステムだ。
過去10年余りのコンテストで、参加した全国の学生たちが「鯖江には面白い人が多い」と口々に言ってくれたのが財産だと思って来た。学生が市民と出会う接点を作る、その原点はオンラインが主軸になっても残したい。コンテスト当日は、各チームに割り当てられたwithの学生が議論を経て必要だとなれば現地の街に走り、オンラインで結んでそこの市民に学生が話を聞く方策を準備することにした。チーム全員で現場に出向くと密になってしまうからだ。

コンテストのトライアルでは参加者が本番さながらの本気のプランを提案した。