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支離滅裂な「GO TO」の効果は一時的? 政府がやるべき合理的対策とは

日本全体での感染制御対策、「撤退路整備対策」、力のある事業者への集中支援が必要だ

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

あまりにも稚拙で支離滅裂な行政執行

 まずこのキャンペーンは、政策としての良し悪し以前に、行政執行のあり方があまりに稚拙である事は、立案・実行者である政府と国交省の高官・官僚も認めざるを得ないと思います。

 あらゆる補助金制度について言える事ですが、当然ながら補助金は国民から集めた税金を使って支給されます。制度を開始するに当たっては、不公平なく公正に支給できる様、適用要件を厳格に定め、抜け穴が出来る限り存在しない仕組みを作り、疑問やトラブルが起きた場合の対処方法を決めて、これを関係者に周知・徹底するのが、通常のそして当然の行政執行のあり方です。

 ところが、この「GO TO トラベル」では、前述の通り、わずか12日前にキャンペーンの前倒しが決まり、6日前の16日になって「東京発着の旅行と、東京在住者の旅行は除く」と突如適用条件が変更になり、5日前の7月17日なってさらに、「若者、重症化しやすい高齢者の団体旅行は支援対象から除外する…大人数の宴会を伴う旅行も対象外とする」一方、「修学旅行は教育的観点から推進する」という、おそよ合理的とは思えない基準が示された後、結局その基準と判断は業者に丸投げされました。

 さらに2日前の7月20日になって突如従来否定されていたキャンセル料の補てんが打ち出されてなお、補助・補てんの対象となる旅行の詳細(「東京発着」とは厳密には何を指すのか。「若者」「高齢者」「団体旅行」「大人数の宴会」は業者の判断にゆだねられたが、結局何を指すのか。キャンセル料補てんの対象となる予約・キャンセルは何日から何日までになされたものか)が厳密に定まってないのです。

 20日現在であと2日に迫ったとはいえ、さすがに7月22日のキャンペーン開始時までには“突貫工事的”に業界団体の基準が作られるのでしょうが、だとしても、例えば「東京発着は対象外」の基準については、新幹線なら大宮駅(埼玉)や新横浜駅(神奈川)、飛行機なら成田空港(千葉)を使えば「東京以外で発着」したと偽装できるように、いくらでも抜け道は見つかるでしょう。

 「若者」「高齢者」については一定の基準を示すとして、特に複数の年齢層の人が混在している団体では、「平均年齢」、「最頻年齢帯」等の団体の何らかの代表値を使わざるを得ませんが、これもまたダミーの人を入れて平均を操作する抜け道が簡単に見つかります。特に補助を受けるために必要な宿泊施設発行の「宿泊証明書」(参照)については、適用の有無や、再発行等をめぐり宿泊施設、観光・旅行業者と宿泊客との間でトラブルが予想されますが、その様な場合の対処法や対処機関は全く定められておらず、今後も定められないでしょう。

 このような状況ですから、当然ながら、国民に対してはもちろん、観光・旅行業者に対しても、制度の周知徹底は不備どころか事実上ほとんどなされていないままです。

 いかに新型コロナウィルス感染症の流行と言う前例のない事態の中にあるとはいえ、この手の行政手続きには長けているはずの政府・霞が関の官僚たちが、なぜこれほどまでに行政執行能力を喪失していしまっているのかは謎としか言いようがありませんが、

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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