いまだ第一歩さえ踏み出せていない日本の現状
2020年07月21日
筆者はかつて「スマートフォンによる電子投票は実現しないのか:世界の潮流に遅れた日本 テクノフォビアを打ち倒せ」という論考をこのサイトに掲載したことがある。それからまだ4カ月ほどしか経過していないが、遅れているとばかり思っていたロシアでさえ、憲法改正の国民投票において一部の地域ながらインターネットを通じたPCやスマートフォンによる投票を実施した。ここでは、この出来事を契機に考えた「インターネット投票」実現への道について改めて考えてみたい。
2020年6月25日から7月1日までの7日間にわたって実施された憲法改正の是非を問う国民投票において、モスクワ市とニジニノヴゴロド州の住民は6月21日までに遠隔投票申請を行い、事前登録が認められれば、インターネットを通じた電子投票が可能であった。モスクワ市の公式サイトないし国家サービスのポータルサイトを通じてプラットフォーム2020og.ruにアクセスしてSMSで送られてくるコードを入力して承認を受けて投票するというものだった。
遠隔投票登録を済ませていたのは119万0726人で、うちモスクワ市居住者は105万1000人だった(RBC2020年7月1日付)。最終電子投票率は93.02%(110万7648人が投票)。その結果、モスクワでの賛成票は62.33%、反対票は37.67%、ニジノヴゴロドの賛成票は59.69%、反対票は40.31%であった。いずれにしても、ロシアにおいてはじめて100万人を超す人々がインターネット経由の投票を実践したことになる。
なかには、国際宇宙ステーションに滞在するロシア人宇宙飛行士が参加したというニュースもある。宇宙からのオンライン投票参加は世界で史上初めてとなる。
もちろん、オンライン投票したうえで、投票所に出向いて投票するといった二重投票が行われるなど、混乱がなかったわけではない。それでも、総じてインターネット投票がうまくいったことで、ロシアでも今後、オンライン投票がより広範に実施されることが確実な情勢となっている。
しかも、2回のオンライン投票ともに、取引履歴の台帳を意味している「ブロックチェーン」という、過去に起きた取引情報を内包した「ブロック」が連結されて一種の「チェーン」を構成する新しいテクノロジーを利用することで、すべての票が正しくカウントされていることを100%保証すると同時に暗号化による安全性を確保している。
具体的には、2019年の場合には、カスペルスキー・ラボ・ポリスが開発したが、多数には対応できないことがわかったため、BitfuryのExonumというブロックチェーンを利用したアプリに変更した。
ロシアの場合は、「ブツとしての投票用紙がない電子投票になると投票結果をより操作しやすくなるのではないか?」との懸念をもつ読者もいるだろう。だが、ブロックチェーンの利用により、投票所の監督者が投票用紙そのものに絡んで不正するよりもずっと不正が難しくなったとみられている。
エストニアは2005年の地方議員選で、インターネットを通じた投票を実践し、有権者約50万人のうち1万人ほどが投票を実際におこなった。その後も、2007年の国会議員選でもインターネット投票が実施された。もちろん、全員に強制したわけではなく、希望者が投票できるようにしたのである。
これに対して、2009年3月、ドイツ連邦憲法裁判所は、2005年の連邦選挙でオランダのNEDAP社の提供した電子投票機による約200万票が選挙の透明性という憲法の原則に沿っていないと判断した。投票機自体が誤りを犯した
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください