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南スーダン野球が全国デビュー。帰国を前に野球連盟も立ち上げて……

野球人、アフリカをゆく(30)ゼロから立ち上げ1年余り。ついにその日が来た。

友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

360人のアスリートたちの目を釘付け

拡大NUDの陸上競技で最も盛り上がる州対抗リレーの様子。

 1月25日、第5回NUDの開会式が行われた。全国10州から360人もの若者たちが首都ジュバの陸上競技場に集うさまは壮観だ。

 南スーダンは、64の部族が存在すると言われており、民族間の争いが今も絶えない。日本の1.7倍の広大な国土は、交通インフラが不十分で、全体の6割を占める2大民族を除き、民族間で市民レベルの交流はない方が普通だ。しかし、NUDに参加するアスリートたちは、9日間の滞在期中に、同じ釜の飯を食い、大部屋に一緒に寝泊まりをする。そこで生まれた交流が、民族融和から平和促進へとつながる。ここにNUDの真の意義がある。

 5日後、ピースデーの当日。朝8時から始まるプログラムは、綱引き対抗戦(すべての参加者をシャッフルしてチーム分けする融和プログラム)を皮切りに、ダンス、寸劇などが続き、11時半からいよいよベースボールデモンストレーションタイムだ。

 ピーターとウィリアムは、36人の選手を統率し、ダイヤモンドづくりや道具配置など、自分たちで準備を行っていく。さすがに10日前にやったばかりなので、勝手がわかっている選手たちの動きもキビキビとしている。

拡大15分間のデモンストレーション。ピーターが主審を務める中、選手たちは臆することなく躍動。女子選手たちも頑張りを見せた。

 違うのは観客層と人数だ。全国から集まったアスリートたち360人、それ以外にもたくさんの観客が見守る中、デモンストレーションは始まった。ベンチ前整列から、集合、礼。そして元気よく声を掛け合いながら、打って、走って、守る。

拡大初めてバットを持つ飛び入り参加者に握り方を指導するピーター。
 今回、私は少し離れて眺めていたが、興味深かったのは、360人のアスリートたちの反応だった。野球はどうしてもゲームの進行に緩急があるうえ、ルールが複雑なため、ピーターやウィリアムがかわるがわるマイクで状況を説明しても、初めて野球に接する人たちが理解するのは困難だ。

 しかし、アスリートたちは食い入るように、グラウンドで展開する選手たちのプレーに見入っている。ゲームの後のバッティング体験タイムにも、たくさんの希望者が手を上げた。下手投げとはいえ、初めて動くボールを打つのに、いきなり外野まで飛ばす人がいたりするのには驚かせられたが、なによりもそれを見て歓声を上げて喜ぶ観客席のアスリートたちの反応が嬉しかった。

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筆者

友成晋也

友成晋也(ともなり・しんや) 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

中学、高校、大学と野球一筋。慶應義塾大学卒業後、リクルートコスモス社勤務を経てJICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。1996年からのJICAガーナ事務所在勤時代に、仕事の傍らガーナ野球代表チーム監督に就任し、オリンピックを目指す。帰国後、2003年にNPO法人アフリカ野球友の会を立ち上げ、以来17年にわたり野球を通じた国際交流、協力をアフリカ8カ国で展開。2014年には、タンザニアで二度目の代表監督に就任。2018年からJICA南スーダン事務所に勤務の傍ら、青少年野球チームを立ち上げ、指導を行っている。著書に『アフリカと白球』(文芸社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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