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コロナ時代の新たなシューカツ。「自分探し」にこだわり世界を広げて

基本をおざなりにしたかつての姿に戻すべきではない。よりよい働き方を求めよう

神津里季生 連合会長

就活とは「自分探し」の本格的なスタート

 ニューノーマルの就活を模索するうえで、やはり大事なことは、「本来の基本」に立ち返って考えることだと思います。

 本来の基本とはなんでしょう? 私は、就活とは、本格的な「自分探し」のスタートではないかと思っています。人間だれしも物心ついてからは、ある意味での「自分探し」を続けているでしょう。他人との違いや自分の性格、向き不向き等々、私ってどういう人間なのだろうと悩みつつ、その都度納得させたり嘆いたり。

 就活という行為は、仕事を探すことを通じて、それまでの「自分探し」に格段の重みを加えて、「本格的な」自分探しに踏み込む、そのスタートだと思うのです。

 もちろん、自分探しの成否と人間の幸不幸は必ずしも直結はしないでしょう。世の中には藤井聡太棋聖のように早々と自分探しができてしまった人もいれば、一生ああでもないこうでもないを繰り返す人もいます。いや、そんな意識を持つことすらないまま一生を終える人もいるでしょう。人間の生き様や価値観は多種多様ですし、いわゆる「運」も千差万別です。

 それでも私は、今現在チャレンジをしている方々には、就活は単なる仕事さがしではなく、実は「自分探し」なのだということを強く意識してほしいと思うのです。それによって就活が充実の度を増すと思うのです。

 就職先がなかなか見つからず、不安ばかりが募る人からすれば、何をのんびりしたことを言っているのかと思われるかもしれません。コロナの広がりで足もとの混乱が続くなかですから、気が気ではないでしょう。

 たしかにこれから先、何がどうなるかはわかりません。未来をわかっている人間は誰もいません。しかしそれでも、コロナ時代のニューノーマルは遠からずその輪郭をはっきりさせていくでしょう。そのことも見据えて、たとえ時間がかかろうとも、「自分探し」の意義を見失うことなく、大事にしてほしいと思うのです。

圧倒的に使用者が優位な日本の雇用社会

 率直に言って、日本の雇用社会の実情は使用者優位です。雇う側と雇われる側では、そもそも雇う側が圧倒的に優位。だからこそ、私たちは労使対等を求めて、労働組合を組織しているわけです。とはいえ、残念ながら現在、日本の労働組合組織率は16.7%という水準であり、8割を超える雇用労働者は労働組合という傘に守られていません。

 ただでさえ雇う側に優位性があることに加えて、わが国は雇用のセーフティーネットが脆弱(ぜいじゃく)ですから、今回のコロナショックのような危機的事態になると、人々はどうしても目の前の雇用不安におののいてしまいます。実際に失業の憂き目を余儀なくされている方々も、かなりおられます。

 今、就活に臨んでいる方々は、このような日本の雇用社会の入り口に事実上入っておられるのです。

 就活の現場では、上から目線のリクルーターもいるでしょう。そこまでいかなくとも、どうしても雇われる側は引け目を感じてしまいがちです。まして足もとの雇用不安です。いわゆる買い手市場の色合いが濃いなかで、就活生は不利な状況にあると言わざるを得ません。

拡大企業のオンライン合同説明会。アナウンサー(左)の進行に従って企業の担当者が自社の紹介をした=2020年7月2日、名古屋市中区

一番大事なものは「自分」

 それでも、これだけは絶対に忘れないでほしい。

 それは、一番大事なものは「自分」であり、就活の基本はあくまでも、その大事な自分を探すことなのだということです。そして、自分探しの道のりは、そう簡単に結論が出るものではないということも。

 もし早々と就職先が決まったとしても、それは自分探しがうまくいったということと同義ではまったくありません。逆に、今仕事がみつからなくても、将来のことはわかりません。多少時間がかかっても、それが本当の自分を見つけられるきっかけになるのであれば、その方がはるかにハッピーです。まさしく、禍福はあざなえる縄の如し、なのです。

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筆者

神津里季生

神津里季生(こうづ・りきお) 連合会長

1956年東京都生まれ。東京大学教養学部卒。在学時は野球部マネジャー。79年、新日本製鐵に入社。84年に本社労働組合執行委員となり、専従役員の活動を始める。外務省と民間の人事交流で90年より3年間、在タイ日本大使館に勤務。その後、新日鐡労連会長、基幹労連中央執行委員長などを経て、2013年に連合会事務局長に就任、15年より同会長。近著に「神津式労働問題のレッスン」。

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