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パート・アルバイト「休業支援金・給付金」に申請できない!

予算は60万件ぶん、申請は開始後1週間でたった3,365件の理由とは

塩村あやか 参議院議員

アルバイトも対象、事業者負担なしの制度ができた

 「少なすぎる」「いや、逆に思ったとおりかもしれない」

 ―3,365件―。

 たった、3,365件。60万件の予算に対してたった3,365件(7月16日現在)。

 これは、7月21日の野党合同ヒアリングで厚生労働省がようやく明らかにした、休業支援金・給付金(以降、休業給付金)の申請件数である。受付開始15日で50万件の申し込みがあった持続化給付金とは雲泥の差である。

 休業給付金とは、簡単にいうと、コロナウイルス感染症により、休業をさせられた中小企業の労働者の賃金を政府が8割(上限11,000円/日)まで給付するというもの。さらに制度をかいつまんで説明をすると、「雇用調整助成金の対象にならない、雇用保険未加入のパートやアルバイト(以下、アルバイト)の救済制度」である。

※  厚労省は「新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止の措置の影響により休業させられた中小企業の労働者のうち、休業中に賃金 (休業手当)を受けることができなかった方に対して、当該労働者の申請により、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・ 給付金を支給する」と説明している。

 しかも、申請用紙には雇用主の署名欄があるが、協力してくれない場合には、署名ナシ(署名欄にその理由を記す)で被雇用者が自身で申請できる点に大きな特徴がある。また、今回は特例として、国が被雇用者に直接給付をする。つまり、中小企業であれば事業主に一切の負担がないのも特徴という、素晴らしい制度である。

 この制度には、学生アルバイトも含まれるということで、バイト代が減収となった学生達にとっても大きな福音となるはずだった。学生支援に力を入れていた私が、参議院内閣委員会で厚労副大臣から言質をとり、NHKニュースにも取り上げられた。

休業支援金・給付金の概要。厚生労働省ホームページから休業支援金・給付金の概要。厚生労働省ホームページから

「申請できない!」 寄せられた多数の声

7月21日の野党合同ヒアリング。左が塩村あやか氏=塩村氏提供。7月21日の野党合同ヒアリング。左が塩村あやか氏=塩村氏提供。

 しかし、である。

 7月10日に郵送申請が開始された直後から「申請ができない」「自分は『休業に該当しない』と会社が言う」という声が徐々に私のもとにも届き始めた。Twitterでツイートをしたところ、さらに多くの声が集まり、問題点も見えてきた。

 ○ バイトはシフト制で、翌月のシフトを前月に決めるため、コロナによってシフトを入れなかった事が「休業の指示」にあたるのかどうか分からない。

 相談者の話を分析していくと、「申請できない・事業主が署名をしてくれない」という理由の殆どは上記であると分かった。私は国会質疑にあたり、厚労省と意見交換を重ねている。その中で「バイトが減った学生も、シフトが入らなくても対象になる」と確認をしている。しかし、現実には「申請できない」という声が殺到し、私は困惑した。

 改めて厚労省に確認をすると「雇用主が休業と認めれば対象となる」と苦しげに答えることが続いた。

「使えない制度」の理由とは

 実際に申請できず困っているA子さんが携帯の画面を写メしてくれた。そこには雇用主側からのメッセージがあった。

 「申請に協力できるか分かりません。シフトを入れていないことを休業としていいのか判断ができないからです。もしも、それが不正認定されると、2倍から3倍ものペナルティを会社が被ることになります」

 そうなのだ。

 「休業」の定義は極めて曖昧であり、厚労省が制度設計の中で最大限被雇用者(アルバイト)の立場に立って回答をすれば「雇用主が休業と認めれば対象である」となる。しかし、事業主からすると自分の判断について責任が問われる羽目になるため、慎重になる。

 すると当然のことながら、労働基準監督署に問い合わせをして、こういう回答を得ることになる。「労働契約書、または、労働条件通知書の内容に沿って判断」せよと。つまり、ここに「週3日、月10日程度」等、明記してある日数だけシフトに入らなければ、休業。契約書や労働条件通知書(労基法15条)に明記がなければ「休業とはいえない」と。この場合、シフトを組まれなかったとしても、休業にはあたらないという訳だ。

 労働基準局・監督署がそのような判断基準にこだわれば、被雇用者が事業主の署名なしで申請した場合でも、結局は同じ結果になるだろう。

 しかし、ちょっと待ってほしい。

 アルバイトの場合、どれだけの人の契約書に、労働条件通知が記してあるのか。学生は試験や長期休暇もあり、一定の日数を働けるという訳でもない。そもそも、正規スタッフだけでは補えない労働力を埋める要員としてアルバイトが活用されていることを踏まえると、時給や日給は明記されていても、日数まで書き込まれていない人が一定数いてもおかしくない。

独自調査では75%が「適用外」か

 上記に関する調査が見当たらず、私はTwitterのアンケ―ト機能を用いて調査をした。参考程度に見て欲しい(図1、2)。

 「雇用契約書」か「労働条件通知書」のどちらかを交わしている人は約半数しかいなかった。労基署の判断でいえば、ここで既に半数の人が申請する権利がない制度だといえる。そして、契約書または、労働条件通知書がある人に更にアンケートを行った結果、その書面の中に「日数が明記」してある人は半数に過ぎなかった。

休業支援金・給付金に関連して実施した、Twitter上のアンケ―ト結果休業支援金・給付金に関連して実施した、Twitter上のアンケ―ト結果

  つまり、中小企業で働くアルバイトの約75%がこの制度の「適用外」ということになる。簡易調査なので実際にどのくらい実態との開きがあるかは分からないが、冒頭に述べたとおり60万人分もの予算を確保おきながら、実際の申請が3365件(募集開始後1週間)という驚愕の申請数の少なさの理由はここにあるのではないか。

解決策はシンプル。実行を急げ

 「国会を閉じるな」。野党の当然の要求も与党にのんではもらえず、6月17日に通常国会は閉会した。しかし、会派で運営できる厚労部会や、野党合同ヒアリングは週1回のペースで開催されており、そこで私はこの「申請できない休業給付金」問題を取り上げている。

 その中で、実例も紹介し、具体的な改善点も提案をしている。

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