衆議院の任期満了まで1年あまり。ようやく動き始めた野党再編だが……
2020年08月02日
現在の衆院議員の任期満了は来年の10月。いつ解散・総選挙があってもおかしくない時期に入っているが、今回はいつもとは事情が違う。新型コロナウイルスの感染拡大というかつてない状況、それとも関連する東京五輪の行方が不透明で、その動向に首相の解散権が強い制約を受けているからだ。
おまけに安倍晋三内閣の支持率は、コロナ対策での不手際もあり、このところ低迷気味だ。もちろん、追い込まれ解散や自暴自棄解散もないとはいえないが、安倍首相にすれば、東京五輪開催前に自ら政権を崩壊させるようなことは、よほどのことない限りやらないであろう。
一方、目を野党に転じると、安倍内閣への支持率が下がり、不支持率が上がっても、野党の支持率がその分、上昇しているわけではない。国民、有権者から見ると、「ほかに政権を託せる人や党が存在しない」というのが現状だろう。こうした傾向はここ数年、世論の基調となっている。
とはいえ、これから1年ほどの間に、衆議院の解散・総選挙は必ずおこなわれる。野党としても、手をこまねいているままですむわけもない。そんななか、ようやく懸案だった野党結集の動きが始まった。
7月15日、野党第一党の立憲民主党は国民民主党との幹事長会談で、枝野幸男代表の両党合流構想を提示した。「両党がそれぞれ解散し、新設合併方式で新党を結成する」ことを申し入れたのだ。
これまで立憲民主党は、自らが存続政党となって国民民主党を「吸収」する意向であったから、それなりの前進には違いない。だが、新党名は「立憲民主党」を引き継ぐというから、なんともわかりにくい。
振り返れば、立憲民主党は2017年秋の衆院解散・総選挙の際、希望の党をめぐる騒動で“漂流”する人たちを収容した救命ボートだった。あの局面で果断に新党を立ち上げ、有為の人材を救出した“枝野立憲”の功績は小さくない。
だが、それから3年間、野党第一党の「特等席」に座っていたにもかかわらず、その成果は極めて乏しい。最近の毎日新聞の世論調査でも、政党支持率は9%で維新の10%にも及ばない。3年経っても支持率が一桁では、野党第一党の資格があるとは思えない。もはや役割を終えたと言わざるを得ない状況である。
枝野代表の上記の提案を受けた国民民主党は17日、党内で議論をしたものの、新党名をめぐって異論が多く、枝野案に同調するには至らなかった。ただ、立憲民主党との合流については、党内の反対意見は1割程度だったといわれる。
立憲民主党は結党当時の勢いから、当初は単独政権を目指してきた。それが、この3年間で困難になったことから、国民民主党を吸収合併する方向に戦略を転換したのだろうが、勢いを失った今の立憲に国民民主が吸収されることはありえない。そこで、今回の「新設合併方式」の提案になったのだろうが、実質的には吸収を求めている印象がぬぐえない。
そもそもこの種の政党の合流案件は、一党が突出した勢いで走っていれば、ことさら誘わなくても、他党のほうが合流してくるものだ。だが、現状はそうではない。勢いのない立憲が主導権を握ろうとすればするほど、合流そのものが実現しなくなる。
党名の「立憲」にこだわることがいけないとは言うつもりはないが、この言葉があるから、立憲民主党を支持しているという人が多いとは、私には思えない。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください