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コロナ検査を「いつでも、だれでも、何度でも」~ニューヨークを目指す「世田谷モデル」

保坂展人区長は児玉龍彦名誉教授の助言を全面的に受け入れ、実行に移し始めた

保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト

「プール方式」の導入

 手法のひとつが、オートメーションで大量に計測する検査機器の導入です。例えば、医師会の検査センターでは、咽頭ぬぐい等で採取した検体を民間検査会社等に搬送し、検査結果を待つ形になっています。すでに、世田谷区医師会では、オートメーションの検査機器を検査拠点に置いて、臨床検査技師を常駐させる案を検討しています。

 世田谷区の世田谷区医師会が新型コロナウイルスの検査体制の拡充のため、1日あたり最大で1千件のPCR検査ができる検査機の導入を検討していることがわかった。すでに世田谷区や臨床検査会社と協議を始め、今秋までの運用を目指している。東京都医師会の角田徹副会長によると、医師会による大規模な検査機器の導入は珍しいという。(7月31日朝日新聞)

 こうしてオートメーションの検査機器導入で検査可能数を増やすことができます。また、児玉教授は、「プール方式」の導入を提案しています。すでに、中国の武漢や韓国、アメリカでも実施されていますが、検査機器に1人分の検体をかける通常の検査と違って、1本の試験管に5人分の検体を入れて計測するというもので、陽性反応が出たら同時に計測した5人をそれぞれ再検査して陽性者を確定させていくという手法です。

 この手法を利用することで、例えば、500人分を大量検査する検査機器であれば、2500人分もの検査が実施することが出来て、コストも低減するというメリットがあります。

介護、医療、保育、学校等で働く人に一斉検査

 もうひとつ、これまでのPCR検査は先に触れたように「何らかの症状があり、感染の疑いがある人」を対象とし、加えて陽性者の周辺の職場や施設、家族等の「濃厚接触者」を検査する仕組みで行われてきました。

 児玉教授の提案は、社会の継続に必要で欠かすことが出来なく、また、人との接触により感染のリスクが高い職業、例えば介護関係、医療、保育、学校等の現場で働く人に対して、感染状況等から判断し、一斉に検査を実施する「社会的検査」を導入すべきというものです。

 こうして、職場の安全と健康を確保し、また隠れた罹患者を発見して感染拡大を防止するという効果があります。

 世田谷区では、コロナ治療にあたる医療機関との情報連絡会を定期的に開催しています。

 「院内感染の防止」はどの医療機関にとっても至上命題であり、病院内にチェックポイントをいくつも置いて、PCR検査を施しています。これまでの院内感染は、新型コロナウイルスの陽性患者が感染源であるとは限りません。骨折等の外科の救急患者で本人も自覚症状がないままに感染していて、防御体制を取らずに手術等を通して医療従事者が感染した事例もあります。

 従って、手術前のPCR検査や医師・看護師等の定期的なPCR検査も、「簡易PCR検査キッド」を自前で調達して、積極的に検査を実施している医療機関がほとんどです。

 東京都が新型コロナウイルスに感染した死者325人を分析したところ、51.7%が医療機関内や福祉施設内で感染していたことがわかった(8月1日朝日新聞デジタル)

 病院の院内感染や、福祉施設の施設内感染は、感染者が大きく広がり、また高齢者が多く罹患することから死亡率も高いことがわかっています。この院内感染と施設内感染を徹底的に防止することに、感染防止対策の中での優先順位を高く置く必要があります。


筆者

保坂展人

保坂展人(ほさか・のぶと) 東京都世田谷区長 ジャーナリスト

宮城県仙台市生まれ。教育問題などを中心にジャーナリストとして活躍し、1996年から2009年まで(2003年から2005年を除く)衆議院議員を3期11年務める。2009年10月から2010年3月まで総務省顧問。2011年4月より世田谷区長(現在3期目)。 著書:「相模原事件とヘイトクライム」(岩波ブックレット)、「脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか?」(ロッキング・オン)、「88万人のコミュニティデザイン 希望の地図の描き方」(ほんの木) 近著に「〈暮らしやすさ〉の都市戦略 ポートランドと世田谷をつなぐ」(岩波書店2018年8月)、「子どもの学び大革命」(ほんの木2018年9月)他

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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