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台湾に学べ:日本の遅れたデジタル・ガバメント政策

「開かれた政府」をめざさない安倍政権の不誠実

塩原俊彦 高知大学准教授

 日本政府は2019年12月20日、「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定した。これについては、本サイト内の記事、「電子請願を無視する日本政府:笑止千万の「デジタル・ガバメント実行計画」の閣議決定」で批判した。

 同政府は2020年7月17日に閣議決定した、「経済財政運営と改革の基本方針2020について」(いわゆる「骨太の方針2020」)のなかで、「内閣官房は現行のデジタル・ガバメント実行計画を年内に見直した上で各施策の実現の加速化を図る」としている。しかし、これについても、「このままでは100%失敗する「行政手続きのデジタル化」:官僚の「テクノフォビア」を猛省せよ」で、この骨太の方針が失敗すると予言した。批判ばかりでは説得力がないので、今回はどうすればいいのかについて論じてみたい。答えは簡単だ。台湾に学ぶのである。

拡大デジタル・ガバメント閣僚会議に臨む菅義偉官房長官(左)。右は竹本直一IT相=2020年6月5日、首相官邸

オープン・ガバメントという精神

 まず、もっとも大切なのことは、デジタル・ガバメントが「開かれた政府」を意味する「オープン・ガバメント」を基本としていることである。だが残念ながら、「デジタル・ガバメント実行計画」にも「骨太の方針2020」にもオープン・ガバメントの文字はない。つまり、安倍政権はオープン・ガバメントをめざしているわけではない。

 2011年に政府指導者や市民社会の支持者が「説明責任を果たし、責任感があり、包括的なガバナンスを推進する目的で「オープン・ガバメント・パートナーシップ」(OGP)を誕生させた。その中心メンバーは、米国、英国、ブラジル、インドネシアなど8カ国で、その後、20億人以上を代表する88カ国などが参加するまでに至っている。

 2011年9月のOGP宣言では、①政府活動に関する情報の入手可能性を高める、②市民参加を支援する、③行政全体に最高水準のプロフェッショナルとしての誠実さを浸透させる、④開放性と説明責任のために新しい技術へのアクセスを増やす――ことに取り組むとしている。

 日本政府の場合、2019年5月に成立した「デジタル手続法」によって、「デジタル・ガバメント」の実現をめざしているだけであり、行政の透明性を情報公開の拡充によって確保することが市民の行政への参加につながるという点をまったく無視している。

 「骨太の方針2020」には、「我が国社会全体のデジタル化を強力に推進する。まずは、デジタル・ガバメントの構築を、早急に対応が求められる、言わば一丁目一番地の最優先政策課題として位置付け、行政手続のオンライン化やワンストップ・ワンスオンリー化など取組を加速する」と書いてある。これだけ読むと素晴らしいと思う人がいるかもしれない。しかし、OGPの常識として、デジタル・ガバメントはあくまでオープン・ガバメントの一部にすぎない。ところが、日本政府はこの常識に反して、デジタル・ガバメントだけに焦点を当て、もっとも重要なオープン・ガバメントの精神を無視しているのだ。ゆえに、日本政府はいま現在、OGPに参加していない。G7の国で日本だけが加盟していないのである。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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