女性たちはなぜ「支持しません」とはっきり言い始めたのか
2020年09月15日
安倍晋三内閣が9月16日、幕をおろす。歴代最長を記録したこの内閣の支持率・不支持率を朝日新聞の世論調査で分析すると、ある特徴が目立つ。第2次以降の政権で女性の支持離れが著しく、不支持率がたびたび男性を上回るのだ。これは戦後の内閣にはなかったこと。いったい何が起きていたのか。朝日新聞の世論調査をもとに分析した。
朝日新聞社が戦後まもなく始めた内閣支持率の調査では長年、支持率も、不支持率も、女性は男性より低かった。「○○内閣を支持しますか。支持しませんか」という現在と同じ質問文となった池田勇人内閣(1960年7月発足)以降の各内閣の男女別支持率・不支持率の平均値をグラフで示す。長期政権は約1年ごとに計算した。
橋本龍太郎内閣まで面接調査、小渕恵三内閣からは電話調査、小泉純一郎内閣以降はコンピューターで無作為に番号を発生させるRDD方式の電話調査をもとにした。
平均値を見ると、支持率で女性が男性を上回ることが時々にある。近年は第1次安倍、福田康夫、野田佳彦各内閣で起きている。一方、不支持率で女性が男性を上回るのは、第2次安倍政権になって以降だ。この7年余りを1年ごとの不支持率の平均値で見ると、2013年と16年で男女が並び、それ以外では女性が男性を超える。
第2次安倍政権が発足した2012年12月(内閣支持率59%、不支持率24%)の調査を見ると、不支持率は男性21%、女性27%。内閣発足直後の不支持率で女性が男性をこれほど上回ることも、これまでなかった。
第2次政権発足時から2020年7月まで計111回の調査の支持率と不支持率をグラフにまとめた。なお、調査では2016年6月から18、19歳も対象に加え、同年7月からは固定電話だけでなく携帯電話にも電話をかけている。
支持率で女性が男性を超えることは一度もなく、不支持率では女性が男性を何度も超える。そして、男性が「支持多数」であっても、女性が「不支持多数」となることが重なる。たとえば2014年11月末は、男性は支持率49%・不支持率34%の「支持多数」に対し、女性は支持率32%・不支持率43%の「不支持多数」だった。
さらに、男女を合わせた全体が「不支持多数」になることがたびたびある。
たとえば2015年7月中旬は、男性は支持率47%・不支持率41%の「支持多数」に対し、女性は支持率28%・不支持率50%の「不支持多数」で、全体は支持率37%・不支持率46%の「不支持多数」になった。
2019年12月も、男性は支持率44%・不支持率39%の「支持多数」に対し、女性は支持率33%・不支持率46%の「不支持多数」で、全体は支持率38%・不支持率42%の「不支持多数」となった。
これも歴代内閣になかったことだ。
小泉内閣以降の男女別の支持率・不支持率の期間ごとの平均値を表にまとめた。「支持多数」は青、「不支持多数」は赤で示した。
第1次安倍内閣は、男性「不支持多数」、女性「支持多数」と正反対。次の福田内閣、続く麻生太郎内閣は男女とも「不支持多数」だった。
民主党の鳩山由紀夫内閣はその逆。男性「支持多数」、女性「不支持多数」の形だ。続く菅直人内閣、野田内閣は男女とも「不支持多数」。
第2次安倍政権も、男性「支持多数」、女性「不支持多数」の形がたびたび生じる。ただし、支持率の低迷が続いた直近7カ月は男女とも「不支持多数」だった。
なぜ、第2次政権では、男性の多数が支持する時に女性の多数が支持しないということが起きたのだろう。
第2次安倍政権発足時の2012年12月の調査で、支持率は男性64%に対し、女性は54%とやや低めながら、男女とも「支持多数」だった。ただ、この時の調査で男女の評価が分かれる政策が複数あった。
たとえば原発。「自民党は原子力発電への依存度を減らすことで公明党と合意しましたが、原発をゼロにすることは明確にしていません。あなたは、自民党のこの姿勢を評価しますか。評価しませんか」と尋ねた結果は表1の通り。「原発ゼロ」を明確にしない自民党の姿勢を、男性の多くは評価するが、女性の多くは評価しなかった。以下、いずれの表も「その他・答えない」は省いている。
憲法9条改正をめぐっても、男女で濃淡が異なった。自民党がいまの改憲4項目をまとめる前の当時の質問として、「自民党は、憲法9条を改正して、自衛隊を国防軍にすることを主張しています。あなたは、このことに賛成ですか。反対ですか」と尋ねたところ、表2の通り、賛成する男性が4割に対して女性は2割だった。
だが、その期待感も長続きしなかった。
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