女性に支持されなかった安倍政権。そのわけは?~朝日新聞世論調査分析
女性たちはなぜ「支持しません」とはっきり言い始めたのか
小野智美 朝日新聞世論調査部員

安倍晋三首相(左)に花束を渡す菅義偉官房長官=2020年9月14日午後3時42分、東京都港区
安倍晋三内閣が9月16日、幕をおろす。歴代最長を記録したこの内閣の支持率・不支持率を朝日新聞の世論調査で分析すると、ある特徴が目立つ。第2次以降の政権で女性の支持離れが著しく、不支持率がたびたび男性を上回るのだ。これは戦後の内閣にはなかったこと。いったい何が起きていたのか。朝日新聞の世論調査をもとに分析した。
男性より女性の不支持率が高い第2次以降の安倍政権
朝日新聞社が戦後まもなく始めた内閣支持率の調査では長年、支持率も、不支持率も、女性は男性より低かった。「○○内閣を支持しますか。支持しませんか」という現在と同じ質問文となった池田勇人内閣(1960年7月発足)以降の各内閣の男女別支持率・不支持率の平均値をグラフで示す。長期政権は約1年ごとに計算した。

◇60年間の男女別内閣支持率

◇60年間の男女別内閣不支持率
橋本龍太郎内閣まで面接調査、小渕恵三内閣からは電話調査、小泉純一郎内閣以降はコンピューターで無作為に番号を発生させるRDD方式の電話調査をもとにした。
平均値を見ると、支持率で女性が男性を上回ることが時々にある。近年は第1次安倍、福田康夫、野田佳彦各内閣で起きている。一方、不支持率で女性が男性を上回るのは、第2次安倍政権になって以降だ。この7年余りを1年ごとの不支持率の平均値で見ると、2013年と16年で男女が並び、それ以外では女性が男性を超える。
第2次安倍政権が発足した2012年12月(内閣支持率59%、不支持率24%)の調査を見ると、不支持率は男性21%、女性27%。内閣発足直後の不支持率で女性が男性をこれほど上回ることも、これまでなかった。
第2次政権発足時から2020年7月まで計111回の調査の支持率と不支持率をグラフにまとめた。なお、調査では2016年6月から18、19歳も対象に加え、同年7月からは固定電話だけでなく携帯電話にも電話をかけている。

第2次安倍政権男女別支持率

第2次安倍政権男女別不支持率
支持率で女性が男性を超えることは一度もなく、不支持率では女性が男性を何度も超える。そして、男性が「支持多数」であっても、女性が「不支持多数」となることが重なる。たとえば2014年11月末は、男性は支持率49%・不支持率34%の「支持多数」に対し、女性は支持率32%・不支持率43%の「不支持多数」だった。
さらに、男女を合わせた全体が「不支持多数」になることがたびたびある。
たとえば2015年7月中旬は、男性は支持率47%・不支持率41%の「支持多数」に対し、女性は支持率28%・不支持率50%の「不支持多数」で、全体は支持率37%・不支持率46%の「不支持多数」になった。
2019年12月も、男性は支持率44%・不支持率39%の「支持多数」に対し、女性は支持率33%・不支持率46%の「不支持多数」で、全体は支持率38%・不支持率42%の「不支持多数」となった。
これも歴代内閣になかったことだ。