[199]講談社本田靖春ノンフィクション賞、西谷修さん、那覇……
2020年08月09日
7月15日(水) 朝、プールへ行き泳ぐ。雑念を振り払え。今日は、自死した近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんの提起した民事訴訟の第1回口頭弁論が14時から大阪地裁で行われる。コロナ禍のあおりを食らって僕らは出張取材が見送られてしまったので、残念至極だ。赤木さんとは口頭弁論の開廷の前に短く電話で話すことができた。行けずに残念だと伝えたら、今日行けないことをすでにご存知だった。あれっ? 不思議、不思議。
14時からペンクラブの理事会。密を避ける趣旨でオンライン参加。芥川賞と直木賞の発表。直木賞に馳星周、7回ノミネートの末。やはり大阪に行きたかったなあ。おそらく赤木さんは意見陳述をきちんとやり遂げただろう。
夜、NHKの『クローズアップ現代+』をみて、そのしっかりとしたつくりに驚いた。初めてみる映像や音声記録もあった。『クロ現』はきちんと取材していた。自死の3日前の俊夫さんのスマホで撮られていた映像。明らかに変調をきたしていることがわかる。本人はどん底の状態で苦しんでいたのだろう。衝撃的だった。いろいろなことを考えさせられた。
僕が個人的に最も驚いたのは、俊夫さんの自死の翌日に自宅を訪れた近畿財務局の「同僚」が、雅子夫人に発していた言葉だ。その録音が残っていた。この「同僚」は、俊夫さんが残していたメモなどは「公表を控えるように」と雅子さんに釘を刺していた。さらに雅子さんが将来「財務局で働くことができるようなことがあり得るかどうか」などと、再就職をにおわせるような卑劣な言葉まで発していた。こんな録音が残っていたとは。雅子さんも腹をくくって、この音源を『クロ現』スタッフに託したのだろう。
東京都の小池知事の記者会見をみていると、フリップに「感染拡大警報」などとキーワードを1行だけ書き込んで、しっかりとデザインしてカメラ目線でかざしている。カメラマンは、わかりやすくて絵になるからフリップをかざす知事を必死になって撮る。こういう記者会見での演出は、テレビのキャスターそのまんま。プレゼンテーションと政策立案とは本来別次元のものだが、小池知事の場合、両者が同じ次元になっている。政治がテレビショー化しているのか、テレビが政治をショー化したのか、どっちもどっちだ。
7月16日(木) 朝、プールに行って泳ぐ。ちょっと泳ぎすぎたか。14時から神保町で打ち合わせ。
岩波書店から出版された吉田千亜さんのルポルタージュ『孤塁――双葉郡消防士たちの3.11』が講談社本田靖春ノンフィクション賞の候補作にノミネートされていて、その発表が今日の夕方あるという。編集者のOさんから、「書評を書いた縁もあるから、発表を待ちませんか」とお誘いを受ける。快諾して待っていたら、17時45分、受賞決定の第一報が入った。よかった! あのような労作が報われるとは、一筋の光明だ。嬉しい。しかも、東京新聞の片山夏子記者の『ふくしま原発作業員日誌――イチエフの真実、9年間の記録』とのW受賞だという。
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