藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【17】ナショナリズム ドイツとは何か/フランクフルト① 抵抗を学ぶ教育現場
ドイツのナショナリズムを探る旅をはじめも一週間、予定の半分が過ぎた。2月16日の日曜の朝、ドイツ鉄道のベルリン中央駅から特急でフランクフルトへ向かった。国土を北東から南西へ、大きく斜めの移動で4時間以上かかる。
この連載をお読みの方は、むちゃな旅だと思われるかもしれない。フランクフルト国際空港からドイツに入り、鉄道で南のミュンヘンまで行ってから一転、北東の首都ベルリンへ。そしてまだ旅の途中なのにフランクフルトへ戻っている。
フランクフルトでは貴重な取材があった。高校生にあたる生徒たちが通うヘッセン州の州立学校を訪ね、歴史の授業でナチス時代がどう教えられているかを参観するのだ。そのアポが今回のドイツ滞在期間の中盤に入ったので、前後を無駄に過ごさぬよう、特急乗り放題の外国人旅行者用パスを使ってあちこち回っているのだ。
かつて東西ドイツの国境だった線を西へ超えるとウォルフスブルクの街。車窓からはフォルクスワーゲン社の大工場が見える。そこがまだこの日の旅程の三分の一で、昼過ぎにようやくフランクフルト中央駅に着いた。近くのホテルに荷物を置き、街へ。明日の授業参観後にまたすぐ移動なので、個性的なこの大都市の空気を少しでも吸っておきたかった。