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ヘイトから戦争へ、あなたならどうした? ナチズムを考え、語り合う生徒たち

【19】ナショナリズム ドイツとは何か/フランクフルト③ 抵抗を学ぶ教育現場

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大ナチス時代の「抵抗」を学ぶ歴史の授業で、立場に応じて並び横に広がって話し合う生徒たち=2月、ドイツ・フランクフルト郊外のハインリヒ・ハイネ校。藤田撮影

【連載】ナショナリズム ドイツとは何か

 ドイツの学校でナチズムはどう教えられているのか。2月17日午前にフランクフルト近郊のヘッセン州立ハインリヒ・ハイネ校を訪ね、歴史の授業を参観した話を、前回に続き書く。

 高校一年生にあたる「10年生」で4~6カ月はあてるというナチス時代の授業の密度は、想像を超えていた。「ナチズムへの抵抗の形」をテーマに、実際にあったナチス政権に対する様々な抵抗と処罰の形をふまえ、「もし自分だったら」という議論にまで深めていた。

 ヘイトから戦争に至る排外主義と拡張主義を、理想の国家実現を掲げる政権が率先する中で、反戦グループの大学生らがギロチンで処刑された例もあった。グループは「白バラ」の名で知られ、ミュンヘン大学のサイトでも紹介されている。

 生徒たちはすでに、ナチスの暴走に多くの市民が抵抗しなかったことも学んでいる。90分授業の残り30分ほどのところで、教師のローラ・スキピスさん(34)が呼びかけた。

 「では、当時自分ならどの段階まで抵抗したでしょう。考えてみてくだい。無抵抗も含めて五段階をそれぞれ示した紙を床に置くので、そこに集まってください」

無抵抗から、暴力での抵抗まで

 教室の前方に、向かって左端の無抵抗から、右端の暗殺すらありうる最も激しい抵抗まで、生徒たちが横に広がる。真ん中あたりが一番多い。授業で一番発言していたヨハナ・ホンブルクさん(15)は右端に行き、ふざけて友達に拳銃を撃つまねをした。

 スキピスさんが生徒たちに理由を尋ねると、真ん中の男子が口火を切った。「自分の意見を持つのは大事だけど、公言して家族を危険にさらすのは無責任だ」

拡大ナチス時代の「抵抗」を学ぶ歴史の授業で、立場に応じて並び横に広がって話し合う生徒たち=2月、ドイツ・フランクフルト郊外のハインリヒ・ハイネ校。藤田撮影

 右端の男子が「僕は抵抗する。仲間を見つけるのは大変だし、家族のことも考えるけど、話せば家族も協力してくれるかもしれない」と言った。そして、「僕はギリシャ人だけど、2級市民と思われるのは嫌だ」と話した。

 彼の意見が唐突に響かないところに、ナチズムを反面教師として戦後に試行錯誤してきたドイツ社会の懐の深さがある。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)

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