藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【25】ナショナリズム ドイツとは何か/ワイマール② ホロコーストと市民
例えば、前日に訪れた国際教科書研究所のエッカート・フクス所長(58)は、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」としてドイツ各地でデモを続ける団体ペギーダにも「ネオナチ」という言葉を使い、「ナチズムへの反省という戦後社会の合意を揺るがそうとしている」と語っていた。
かつてナチスがホロコースト(大量虐殺)という最悪の形で具現化した人種や民族への偏見に基づく排外主義に警鐘を鳴らす意味で、あえて「ネオナチ」と呼ぶのだ。
一方でシュトルツルさんは、今のドイツにみられる様々な排外主義をひとくくりに「ネオナチ」と呼んでしまうと、かつてのナチス自体のすさまじい非人道性がぼやけると危ぶむ。
フクスさんも「ネオナチ」が旧東側で強い理由については慎重だった。確かに東ドイツではナチズムが共産主義の勝利で克服されたことになった分、戦前のドイツの政府や民主主義のあり方について西ドイツほど徹底した反省はなされなかった。それでもフクスさんは、「再統一前の東と西でのナチス時代への向き合い方の違いにネオナチの原因があると単純には言えない。ベルリンの壁崩壊以降に旧東側に生まれた、社会的、経済的な様々な失望もある」と語っていた。
シュトルツルさんに対し、私は聞き方を変えた。