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ナチスとの「同時代性」の終わりは克服できるか ホロコーストの記憶継承

【27】ナショナリズム ドイツとは何か/ワイマール④ ホロコーストと市民

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

市長ら「厳しい非難は不公平」

 当時のワイマールでの反応として、市長や地元のキリスト教界の代表、文化史跡行政の責任者が連名で出した声明が紹介されている。

 「連合国軍の新聞やラジオによって、ワイマール周辺の市民がブッヘンバルトでの残虐行為を知りながら黙っていたという見方が広まっている。この厳しい非難は不公平であり、ナチス・ドイツの現実になじみがないことによると思われる。ワイマールの市民たちは打ちのめされている。この文化の古都にふさわしくない汚点は甘受できない」

拡大ワイマール市街でナチスを歓迎する群集を紹介する印刷物。こうした集会の準備にブッヘンバルト強制収容所の収容者が動員されたという記録もある=2月、ドイツ・ワイマール。藤田撮影

 ここで言われる「ナチス・ドイツの現実」とは、ワイマールの市街ではナチスを受け入れこそすれ、丘の向こうで独裁を支えた強制収容所の実態など一般市民にはわからなかったという「現実」だろう。

 強制労働や大量虐殺の現場を目撃した市民は少なかったかもしれない。だが、この「解放後」に至る展示で示されている、距離にして数キロの市街と強制収容所の関わりを示す上記の数々の史料が、この市長らの声明の力をそいでいる。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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