藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【29】ナショナリズム ドイツとは何か/ワイマール⑥ ホロコーストと市民
ドイツ中部の古都ワイマールで、史料館「ワイマール共和国の家」を2月19日午後に訪れた話を続ける。
第一次大戦後にドイツ初の民主的な憲法がこの地で採択されながら、世界恐慌に政治が揺れる中でナチスが台頭。この憲法を骨抜きにして独裁に至る「民主主義の終わり」への過程を、史料館の展示に沿って振り返ってきた。
その前回の連載で私は、ナチス独裁政権が第二次大戦へ向かう1930年代で「時系列の展示は終わっていた」と書いた。だが、この史料館ではそれだけではなく、そこから教訓をどうくみ取り、今の民主主義にどう生かすかという提起までがなされていた。
ナチス時代に至る展示の暗いトーンとはうって変わり、明るい紫をバックにした「民主主義のビジョン」という最後のコーナーに、六つのテーマで問いかけがあった。いずれもワイマール憲法下の政治状況をとらえたもので、昨年の憲法採択百周年を記念してできた史料館らしく近況に引きつけていた。
テーマ別に用意された小ぶりな紙の札に、来館者がそれぞれの考えを書いたものが、壁にたくさんぶら下がっていた。今日への示唆に富むその問いかけのうち、二つを紹介する。
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