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ナチズムの教訓は原点であり続けるか? 戦後ドイツの現在と未来

【30】ナショナリズム ドイツとは何か/フランクフルト再訪、岡裕人氏に聞く

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

歴史教育現場のいま

 私がフランクフルト近郊のヘッセン州立校で参観した、高校一年生にあたるクラスの歴史の授業について聞いてみた。ナチス政権に多くのドイツ人が無抵抗だった中、処刑すらされた抵抗について、実例をもとに「自分たちならどうしたか」と考えさせる内容だった。

 岡さんは答えた。

拡大フランクフルト日本人国際学校でインタビューに応じる岡裕人さん

 今回はその部分を参観されたわけですが、ナチス時代に関するドイツの歴史教育ではまず、あの戦争犯罪はヒトラーや取り巻きだけでなく国民全体を巻き込んで行われたということを教えます。今でも記録映画が残っていて、ヒトラーの演説や、喝采を送る国民の映像も見せ、少年少女から洗脳して巻き込んでいったことを説明します。

 民主主義が衆愚政治になりうる怖さを伝えた上で、その中でもきちんとナチスを批判する人たちがいたことを教える。今も民主主義ではポピュリズムが問題になっていますが、もし大勢がそうなっても自分たちにはできることがあることを生徒たちに気づかせる、という授業のもって行き方ですね。

 教師が材料を与えて考えさせ、生徒が疑問や意見を持ち、批判すべきはするというのは、戦後の西ドイツで世代が交代し、1970年代にナチス時代を直視できるようになって以降の教育です。ただ、当初は若者も責任を負うべきだという重苦しい教え方でしたが、さらに世代交代が進むと、若者はそういう教育ではついてこなくなります。

 冷戦が終わって、ソ連をはじめ共産圏でも人権を抑圧してきたという話が出てきました。ドイツでは2006年のサッカーW杯をホストして若者が国を誇らしく思う空気も強まりました。ナチス時代の相対化というか、直視しつつも暗い面ばかりを見ない。ナチスへの抵抗をしっかり教えるこの授業には、そうした面もあるのでしょう。

拡大ドイツ・ヘッセン州の州立校でのナチス時代について学ぶ歴史の授業の様子=フランクフルト近郊

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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