藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
東アジアが緊迫すると語られる日米核共有はありうるのか
中国が核開発に乗り出した。日本まで核武装に走らないよう、米国の核を日本と共有する研究をすべきだ――。米政府内でのそんな提言を記す1960年代の秘密文書がある。今や中国に加え北朝鮮も核開発を進め、緊張が高まった2017年には日本の政界で米国との核共有論が語られた。日米で時折頭をもたげるこの議論について、今回の異色の文書を紹介しつつ考えたい。
英文で「秘密 限定配布」と記されたこの文書のタイトルは「日本の核兵器分野の見通し 米国の行動の指針への提言」。米ジョンソン政権で国務省や国防総省などの高官からなる「核不拡散委員会」が1965年6月、ラスク国務長官に提出した。
米政府では冷戦初期の1950年代、ソ連をはじめとする共産主義陣営の侵攻を欧州だけでなく極東でも防ごうと、日本にも米国の核を置くことを国防総省で構想していた。それは実現しないまま、64年に中国が核実験に踏み切った。
この東アジアの安全保障をめぐる動揺が日本に波及し、核武装に向かわせることを防ぐ狙いで、米政府の省庁横断の組織が日本との核共有の研究にまで踏み込む提言をしていた。この文書はそうした意味で異例だ。
「核不拡散委員会」については、米国立公文書館での開示文書を元に、日本の学者では今世紀に入り黒崎輝・福島大教授(国際政治論)の先行研究がある。この文書も複数の学者が紹介しているが、核共有の部分はほとんど報じられていない。その学者のひとりである吉田真吾・近畿大准教授(日本外交)が2008年に入手していた文書をいただいた。
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