阿部 藹(あべ あい) 琉球大学客員研究員
1978年生まれ。京都大学法学部卒業。2002年NHK入局。ディレクターとして大分放送局や国際放送局で番組制作を行う。夫の転勤を機に2013年にNHKを退局し、沖縄に転居。島ぐるみ会議国連部会のメンバーとして、2015年の翁長前知事の国連人権理事会での口頭声明の実現に尽力する。2017年渡英。エセックス大学大学院にて国際人権法学修士課程を修了。琉球大学客員研究員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
沖縄県では近年、米軍の新しい施設や基地の建設に対する県民の抗議活動が継続しているが、それに対して日本政府による「弾圧」とも言える事態が起こっていることは本土ではあまり知られていない。
2016年には地元住民が根強く反対していた米軍のヘリパッド建設のため、人口わずか150人ほどの高江地区(東村)に500人もの機動隊が派遣された。派遣が決まったのは2016年7月10日に行われた参議院議員選挙で、新基地建設反対を掲げた伊波洋一氏が当選した直後である。
普段は静かな地区の道路は紺色の制服の機動隊で埋め尽くされ、反対する県民の強制的な排除が行われた。座り込みを続けようとする県民と、排除しようとする機動隊の間で激しいもみ合いが起こり、現場は騒然としていた。
山城さんは沖縄の基地建設反対運動を長年リードしているシンボル的な存在で、高江でも抗議活動を率いていた。
2016年10月17日、山城さんは仲間とともに工事の状況を確認するために米軍施設のエリアに入ろうと、侵入防止のために設置された有刺鉄線を止めている針金を二箇所切断した。その後、機動隊員に肩を掴まれ、止めようとする仲間から引き離されて警察車両に入れられた。
その日から、山城さんは5ヶ月間勾留された。
その間、弁護士以外、家族も含めて誰とも接見を認められなかった。弁護士との接見も分厚い窓ガラス越しでしか許可されなかったため、十分な意思疎通ができなかったと後に山城さんは語っている。
さらに、拘置所内には時計がなく、就寝時には少しだけ弱くなるものの照明が24時間灯りっぱなしだったために時間の感覚を奪われ、大きな苦痛だったそうだ。後にある国連関係者は「時間の感覚を奪うのは、拷問の初歩的な手法である」と語っていた。
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