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新しい野党第一党の「綱領」を読み解く

「保守二大政党論」に終止符を打つ日本政治の転換点に

田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授

 立憲民主党と国民民主党は8月上旬、両党で結成する新党の「綱領」案などで合意し、それぞれの党内手続きに入った。その後、国民民主党では、玉木雄一郎代表が分党論を唱えるなど、党内手続きに混乱が見られる。

 本稿では、新たな野党第一党の「綱領」案について、どのような理念・思想なのか、読み解く。政局の混乱はさておき、それが歴史的・社会的に意味をもつのか、それとも単なる数合わせ的な作文なのかを確認しておくことは重要である。なぜならば、野党第一党の「綱領」とは、自由民主党政権に代わる「もう一つの国家方針」となり得るものだからだ。

拡大衆院本会議の開会前、言葉を交わす立憲民主党の枝野幸男代表(右)と国民民主党の玉木雄一郎代表=2020年1月22日

立憲民主党と国民民主党で合意した「綱領」

 政党の「綱領」とは、個別の政策よりも上位の概念に位置づけられる「国家方針」を示す。目指す国家ビジョンや社会像、政権運営の基本方針などとも言い換えられる。個別の政策は、そこから自ずと導き出される。逆にいえば、個別の政策で合意しても、国家方針で合意できなければ、その政党が政権を獲得しても、まともに運営できない。

 新しい野党第一党の「綱領」は公開されている。報道を通じてだけでなく、人々に直接、原文を公開するのは、とても重要である。往々にして政治文書は、非公開であるがゆえに、怪しげな価値をもつことがあるからだ。まず、この点からして、人々に開かれた野党第一党を創ろうとする意志がうかがえる。

 なお、新党の「綱領」は「理念」と「政策の基本方針」で構成されている。かつての民進党も同様の構成である。新党の「理念」は【基本理念】で、民進党のそれは前文と【私たちの立場】からなる。新党の「政策の基本方針」は【私たちのめざすもの】で、民進党のそれは【私たちの目指すもの】となっている。


筆者

田中信一郎

田中信一郎(たなか・しんいちろう) 千葉商科大学基盤教育機構准教授

博士(政治学)。国会議員政策担当秘書、明治大学政治経済学部専任助手、横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、内閣官房国家戦略室上席政策調査員、長野県企画振興部総合政策課・環境部環境エネルギー課企画幹、自然エネルギー財団特任研究員等を経て、現在に至る。著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』『信州はエネルギーシフトする』、共著に『国民のためのエネルギー原論』『再生可能エネルギー開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック』などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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