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吉村洋文・大阪府知事効果? 日本維新の会の支持拡大のワケと超えるべき壁

コロナ対応に奮闘する大阪府知事、国会での建設的な政策提言、首都で地盤固めも。

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

 日本維新の会の支持率が上昇傾向です。これまでマスメディアによる日本維新の会の支持率は、数字で言うと3%前後、順位で言うと自民、立憲、公明に次ぐ4位あたりがほぼ“指定席”でしたが、この数カ月、公明を上回る勢いがみられます。

 維新の会はなぜ支持を獲得したのか、さらなる躍進のために維新が超えなければならない壁は何なのか。本稿では具体的に見ていきたいと思います。

5人以上の飲み会を控えるよう呼びかける大阪府の吉村洋文知事=2020年7月28日、大阪市

支持率上昇の背後に三つの要因

 日本維新の会は、大阪府をはじめとする関西地区での人気は長く安定していますが、日本全国を対象とする世論調査ではどうでしょうか。

 報道各社の実施する世論調査は、質問の仕方やサンプル数やサンプルの収集方法などにより、どうしても差が出てきます。筆者は、「みらい選挙プロジェクト」を運営する三春充希氏がツイッターで公開しているような、各社の世論調査の結果を偏りをなくし移動平均で見る手法が最も世論を反映していると考えて、採用しています。

 その手法で日本維新の会の支持率をみると、これまでは長らく3%程度の支持が限界でした。ところが、今年春から支持率が伸び始め、5月から7月には6%前後まで上昇。8月に入った現在も支持率は4〜5%程度で安定しており、国政政党では4%台を長期にわたって維持している公明、共産と同等か上回るようになっています。

 この数字的には小さく見えて、実際には大きな躍進である支持率の上昇には、主に三つの要因があると考えます。第一に新型コロナウイルスに対応する吉村洋文・大阪府知事のメディア露出が増えたこと、第二に通常国会における維新の会所属国会議員の建設的な政策提言や議論があったこと。第三に維新の会による地盤固めの着実な進歩――です。以下、詳しく見ていきましょう。

吉村知事のメディア露出で政党支持率がアップ

 新型コロナウイルス対策では、地方自治体がそれぞれ独自の施策を打ち出すなど、首長のリーダーシップが問われました。さらに、都道府県別の新規陽性者数などが背比べのように比較されて報道されるなか、日本各地の首長による記者会見がほぼ毎日開かれてインターネットやテレビで中継されるという新たな事態も生まれました。

 5月に毎日新聞と社会調査研究センターが実施した全国世論調査では「新型コロナウイルス問題への対応で最も評価している政治家」という質問で、吉村大阪府知事が小池百合子・東京都知事や安倍晋三首相を尻目に、断トツの1位に選ばれました。

 吉村大阪府知事は、日本維新の会では「副代表」、大阪維新の会では「代表代行」という肩書きで、厳密には政党トップではありません(日本維新の会も、大阪維新の会も、松井一郎大阪市長が「代表」です)。しかし、「ポスト橋下」からはじまった吉村・松井の双頭体制が約5年になるなか、吉村知事が実質的な党の顔としてテレビに登場する時間が増えたことで、「新型コロナ対策に動く首長・積極的にコロナ対策を行う維新の会」というイメージが世間に一気に広がりました。

 政党支持率トップの自民党の総裁でもある安倍首相が「会見が少ない」などと批判されるのと対照的に、露出時間を着実に増やした吉村知事が率いる日本維新の会が支持を拡大するのは、ある意味当然でしょう。全国に目を向ければ、小池都知事など自治体首長がメディア露出を増やした例は他にもありますが、国政政党のトップクラスを兼任する吉村知事の露出は、自らの政党の支持率上昇に直結するという強みがあります。

政党支持急落のリスクも

 ただ、一方で吉村知事のリーダーシップに依拠しすぎることへのリスクもあります。

うがい薬でのうがいを奨励する大阪府の吉村洋文知事=2020年8月4日、大阪府公館

 8月4日、吉村知事は突如、記者会見を開き、「イソジン」などで知られるポビドンヨードのうがい薬で新型コロナウイルスの陽性率が下がったという研究の途中経過を発表。症状のある人や医療従事者などリスクを持つ人に、ポビドンヨードによるうがいを励行するよう呼びかけました。

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