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新型コロナ危機下の「全国一斉休校」で10代の妊娠が増えた!

圧倒的に男性依存の避妊の実態。いま必要なのは正確な性教育と市販の緊急避妊薬

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

 2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三総理は3月2日から全国一斉に小中高校に臨時休校を要請した。それから約3カ月間、子ども達は学校に通えず、ステイホームを余儀なくされた。教育機会の喪失、共働き家庭の困惑、給食業者らの経済的困窮など、様々な弊害が憤出した。児童虐待も増えると懸念されたが、くわえて予測されなかった事態が起きた。

臨時休校についての記者会見で、協力を求め頭を下げる安倍晋三首相=2020年2月29日、首相官邸

「一斉休校」が若者の性行動と妊娠に影響

 「10代の妊娠相談がじわっと増えている」

 3月末に会った友人の産婦人科医からそう聞いたとき、私は驚くとともに、ありうる話と思った。

 「こうのとりのゆりかご」を設置する熊本の慈恵病院の妊娠相談窓口では、中高生からの相談が過去最大となった。NPO法人「ピルコン」の「ピルコンにんしんカモ相談」へのメッセージ送付件数は、5月に1万1千件以上と前月比で倍増したという。20代が6割超だが、10代も2割超を占めている。

 授業も部活もなくなり、親は仕事で留守、時間はありすぎるほどある。家にいるのは子どもだけ。中高生だけでなく大学生も、講義もアルバイトもなくなった。図書館も利用できない。カラオケやゲームセンターも目の敵にされていて、ストレスを発散するところがない。「一斉休校」が若者の性行動と妊娠に少なからぬ影響を与えたことは明白である。

 妊娠検査薬は数百円でドラックストアで市販されているから、それで妊娠がわかってあわてて相談した子もいるだろう。ただ、なかには「オーラルセックスしたけど、それで妊娠しただろうか」といった、妊娠とからだの知識の乏しい子もいるし、ひとり親家庭で数百円の妊娠検査薬を買えない子もいた。相談先を知らず、一人悩んでいる子も多いに違いない。

 では、そういう10代の子ども達が実際に妊娠していた場合、どんな対処法がとれるのだろうか。

危険で時代遅れの掻爬手術による中絶

 ひとつの手段は人工妊娠中絶手術である。しかし、そのハードルは高い。

 親に言えず、思い悩むうちに、中絶の時期(妊娠22週未満まで)を逃してしまうケースは少なくない。健康保険の適用外のため、経済的負担が大きくて中絶できず、覚悟のないまま子どもを産む子もいる。思いあまって友人に相談したら、カンパを集めてくれ、中絶手術を受けられた子は、ある意味幸運だ。

 日本で中絶といえば、金属製の器具で子宮の中身を掻き出す掻爬(そうは)手術が主流だ。実は、掻爬手術が行われているのは先進国では日本だけで、WHO(世界保健機関)は「たとえ専門家が施す場合でも安全性に劣る」と指摘、「時代遅れの外科的中絶方法」と断じている。他の先進国では妊娠中絶薬を使うか、手術をする場合も吸引法が多い。

 中絶薬は、最終月経から妊娠49日以内の妊娠初期に利用できるが、日本では認可されていない。出血などの副作用が大きいからと、厚労省は説明する。避妊のためのピルも長い間、日本では同じような理由で許可されなかった。

 ちなみにピルについては、国会で私が「避妊のために副作用の少ない低用量ピルを認可してほしい。女性の体を守るためにも、望まぬ妊娠や妊娠中絶を防ぐためにも、避妊の選択肢はいくつもあった方がいい」と質したのに対し、厚労省が「欧米で副作用が小さいからといって、欧米の女性と日本の女性はからだが違う」と答えにならない答弁をしたのを覚えている。

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