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香港国家安全維持法は何を壊したのか

「三権一体」の北京の論理、一党支配が自治と自由を飲み込む

村上太輝夫 朝日新聞オピニオン編集部 解説面編集長

「東方のベルリン」と呼ばれた冷戦期を連想

拡大覆面禁止法に反対し繁華街を練り歩くデモ隊=2019年10月4日、香港

拡大覆面禁止法の施行を発表する香港の林鄭月娥・行政長官=2019年10月4日
 香港は、中国の一地区でありながら、権力集中ではなく権力分立型の基本制度を持つ。

 特筆すべきは司法の独立性の強さである。昨年の逃亡犯条例改正をめぐる抗議活動では、香港の行政側の方針でデモ参加者のマスク着用を禁じた「覆面禁止法」が施行されると、香港高等法院が香港基本法に反するという判断を下した。こうした事態は中国では起こりえない。

 最重要ポストである行政長官は、間接制限選挙で中国共産党政権の意向を反映しながら代々選ばれており、このことと、議会にあたる立法会で過半を占める親中派議員を通じて、北京の指導が及んでいた。ただ立法会は、異議を唱える野党議員を少なからず抱え、現在は70議席中、24を占める。この勢力図次第では、立法会が行政を牽制することが可能となる。

 憲法学者の長谷部恭男氏が指摘するように(「憲法とは何か」)、今の東アジアには、権力分立などを柱とする立憲主義に基づく憲法を持つ日本のような国々と、そうでない中国のような国々とが並立している。香港はそのはざまで微妙な位置を占めてきた。香港が「東方のベルリン」と呼ばれた冷戦期を連想させる構図である。

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筆者

村上太輝夫

村上太輝夫(むらかみ・たきお) 朝日新聞オピニオン編集部 解説面編集長

1989年朝日新聞社入社。経済部、中国総局(北京)、国際報道部次長、台北支局長、論説委員などを経て現職。共立女子大学非常勤講師、日中関係学会理事。共著に『台湾を知る60章』(明石書店)など。

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