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「オリーブの木」政権が野党の現実的な選択か

新しい政権への渇望は高いのに盛り上がらない立憲、国民の合流・新党。どうすれば……

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

世論の支持を得るため超えるべき四つのハードル

 立憲と国民の合流・新党が世論に支持されるためには、超えなければならない幾つかのハードルがある。いずれも厳しいものだが、コロナ禍による未曽有の危機、大きな転換期を迎えている政治の現況を前にすれば、これらは最小限の条件であろう。

 第一に、単なる合流新党の結成は、民主党政権時代の幹部の救済策、生き残り策にしか見えないことだ。中堅、若手、新人がまたもや踏み台にされることにならないかという懸念も強い。こうした印象をどう払拭(ふっしょく)するか。

 第二に、今回の動きが、立憲民主党の資金不足を補う、資金目当ての新党工作に見られがちということだ。この点では、すでに新党への不参加を表明している玉木雄一郎代表の、カネ目当てなら「全額国庫に返したほうがいい」(日経8月21日付朝刊)が妥当であろう。

 第三に、新党を結成して何を目指すのか、明確にしなければならない。民主党が政権をとった際の切り札だった「マニフェスト」に懲りたのか、その後、マニフェストという言葉をすっかり聞かなくなった。ただ、どういう言葉を使うかはともかく、①コロナ対策、に加えて、②消費税減税、③対中政策、④脱原発・脱炭素――といった争点について、明確な主張を掲げられなければ、新党の意味はない。さらに、コロナ後の新しい経済社会、生活のあり方も提案してもらいたい。

 第四に、合流新党は、かつての民主党のように「受け皿」政党を狙っているとみられることである。政権交代前の民主党は、自民、公明、共産の三党を嫌う有権者の「受け皿」になるという戦略によって、政権交代を実現した。「その夢よ、もう一度」とこの策を採るのではと強く危惧するが、こうしたあざとい戦略はもう通用しないことを肝に銘じるべきだ。

拡大立憲民主党の福山哲郎幹事長(左)と国民民主党の平野博文幹事長(右)=2020年7月29日、国会内

政党の個性を残すかたちの「連立政権」を

 もちろん、野党が自然の流れで一つにまとまり、結集して新党ができれば、それは望ましいことだろう。しかし、「大きなかたまり」をつくることだけを目的に、無理な妥協をしてひとつにまとめても、世論の支持はとうてい得られまい。では、どうすればいいか。

 この際は、かつて小沢一郎氏が提唱した「オリーブの木政権」を目指すのがもっとも有効かもしれない。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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