テレワークも楽じゃない。男性たちよ、コロナを機に住宅政策に異議を!
狭い、部屋がない、居場所もない……。「雨露をしのぐ」住宅政策から脱却の好機に
円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

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第一波のコロナ感染拡大で、テレワークを推進した企業が多かった。もちろんホワイトカラーの、それも大企業に多く、テレワークができるかどうかでも格差の問題が顕著になったが、テレワークしたくてもできない人たちからではなく、テレワークになった人たちの悲鳴があちこちから上がった。
狭い家では仕事ができない!
「家では仕事ができない!」というのだ。まず、家が狭くて、仕事部屋どころかコーナーすら確保できないという。
1979年にECが出した非公式の「対日経済戦略報告書」の中で、日本人の住居がウサギ小屋と形容され(フランスの集合住宅も似たような狭さなのだが)、我が国で急速に「うさぎ小屋」が自嘲気味に使われるようになったことを、覚えている人もいるだろう。
確かに、当時、多くの人が買うにも借りるにも、値が高くて狭い住居に不満を募らせていたのは明らかだ。その頃から40年の月日がたったが、住宅事情はさほど良くなっていない。最低居住面積水準未満の世帯は、平成5(1993)年は12万5700世帯で世帯全体の11.3%だったのが、平成30(2018)年には12万9900世帯(全世帯中の7.9%)と割合は減っている。
最低居住面積水準は、世帯人数に応じて健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準で、平成18(2006)年に見直しが行われ、たとえば4人世帯なら50平方メートルは必要になった。といっても、トイレも風呂もこの中に入るから実際の居室のスペースは狭くなる。
誘導居住面積水準は、豊かな住生活実現を前提として多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられている面積水準のことだが、これはまさにテレワーク型ライフスタイルにも合う住宅ということか。この中でも都市居住型誘導居住面積水準は国土交通省の定めでは4人世帯で95平方メートルになっている。
これなら、まあまあの居室スペースがあることになるが、95平方メートルというと3LDKで、30年物の中古なら東京で5000万円強。賃貸なら月の家賃が20万円前後。子ども2人がいて20万円の家賃は、かなりの高収入でないときつい。もちろん地域によって差はある。
テレワークでは部屋数が大事だが、部屋数が多いのは、1位は富山(6.49部屋)、2位は福井(6.27部屋)、3位は岐阜(6.05部屋)、4位秋田(6.03部屋)。少ないほうの1位は東京(3.42部屋)、2位神奈川(4.02部屋)、3位沖縄(4.09部屋)、4位大阪(4.12部屋)である。
山手線、地下鉄でテレワーク……
最下位の東京でも3.42、つまり3部屋あるのかと驚かれるかもしれない。これは持ち家(61.1%)と借家(35.8%)の合計の平均だからで、居住面積も室数も借家は持家の半分以下というのが現実だ。また、一戸建てと共同住宅(マンション・アパート・団地など)の比較で見ても、一戸建ては平均128.64平方メートル、共同住宅は47.92平方メートルと2.7倍の開きがある。「家では仕事ができない!」と悲鳴が上がるのは当然なのである。
「テレワークのために、家具の配置を替え、不要な物は捨てて、仕事コーナーを作った」という知人がいたが、「山の手線も地下鉄も外出自粛と在宅勤務でガラ空きだったから、そこでテレワークしてたよ」という友人の笑えない話もあった。

大塚家具の新宿ショールームのテレワークのための展示販売。こんな家具が入る家に住みたいが……=2020年6月19日