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テレワークも楽じゃない。男性たちよ、コロナを機に住宅政策に異議を!

狭い、部屋がない、居場所もない……。「雨露をしのぐ」住宅政策から脱却の好機に

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

うらやましかったアメリカのテレワーク

 アメリカはボストンの隣町に住む友人の家に1週間ほど泊めてもらったことがある。彼女の夫は車でボストンに通勤し、彼女自身はニューヨークに本社のある企業の社員だったが、仕事はすべて在宅勤務だった。本社だけでなく、全米の支店や世界各国の顧客ともつながり、家に居ながらにしてオンライン環境さえ整っていれば仕事ができるのだと感心した。

 今の話ではない。25年前、日本ではやっと細川護熙内閣で端末の自由化(買い取り制度)がされて、通信業界全体の大きなターニングポイントになった頃だった。アメリカではその年1994年の9月20日が「従業員テレワーク日」に指定され、連邦政府機関や民間企業がテレワークを積極的に推進していた。

 「車の渋滞に巻き込まれる通勤もないし、集中して仕事をしたら、料理や散歩で息抜きもできる。テレワークは快適よ」と彼女は言った。確かに広い家で彼女の仕事部屋も立派で、うらやましい限りだった。「日本だって、あんな通勤ラッシュで消耗するのをやめてテレワークを進めればいいのに」と忠告もされた。

 大いに一理あると思った。排気ガスだって少なくなり、環境にも貢献できる。「でも今の日本の住宅事情じゃ在宅ワークは難しいかも」と私。「そうね。働き方と同時に住宅政策も変えなきゃね」

 テレワークでは、仕事部屋の有無がかなり大事だが、機材の性能の問題もあるし、何より仕事に集中できるかが大きなポイントとなる。アメリカの友人の仕事部屋は、リビングルームなどから隔離された独立のもので広さもあったが、それだけでなく、2人の子どもは既に高校生で、彼女が集中して仕事をしている間は学校に行っている。帰宅しても、彼女がドアに「仕事中」と札を下げておけば邪魔をしなかった。

子どもとの関係悪化も

 このコロナ禍で突然在宅勤務になった人たちは、まず仕事場と良性能の機材の確保に追われただけでなく、集中できる場と時間の確保に頭を悩ましたに違いない。子どもは休校中である。保育所も預かってくれないとなると、小学校の低学年や乳幼児がいて2DKか2LDKの家で、在宅の仕事に集中するのは至難の技だ。

 子どもはぐずる、泣く、おもちゃは壊す、兄弟喧嘩はする。夫も妻も在宅勤務の場合、育児と家事と仕事を交代でやろうとしたって、子どもはちっともおとなしくなどしていない。

 「頭を使う仕事なのに」「締め切りがあるのに」「集中しなきゃできない仕事なんだよ」。イライラして怒鳴りたくなってしまうことだって出てくるだろう。あー、よくわかる。私もずーっと一人で在宅勤務の働き方で子どもを育ててきたから。

 私が鬼の形相で原稿用紙に向かっている時は(古いなあ、今ならパソコンだ)、娘もわかっていて話しかけるのを我慢している。こんなときに話しかけられると集中力が途切れ、次に何を書こうとしていたかしばし、取り戻せない。

 そこで料理や食器洗いをしていると、娘は嬉しそうに学校であったことを話してくる。ところが物書きというのは因果な商売で、料理や掃除をしながら、原稿の構想を考えている。原稿用紙の前に坐って考えるのではないのだ。それがわからないから、母親が上の空で自分の話を聴いていないとわかったときの、娘の落胆と母親への不信!「もういい。あなたには何も話さない」と娘は言った。

 在宅勤務で目の前にパパがいるのに、何を言っても聴いてくれない。「うるさい」と怒鳴られる。よほど注意しないと、在宅勤務が親子関係を悪化させかねないのだ。

 今後、毎日でなくても週に3日程度の在宅勤務が各企業で進む可能性がある。

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筆者

円より子

円より子(まどか・よりこ) 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

ジャパンタイムズ編集局勤務後、フリージャ―ナリスト、評論家として著書40冊、テレビ・講演で活躍後、1992年日本新党結党に参加。党則にクオータ制採用。「女性のための政治スクール」設立。現在までに100人近い議員を誕生させている。1993年から2010年まで参議院議員。民主党副代表、財政金融委員長等を歴任。盗聴法強行採決時には史上初3時間のフィリバスターを本会議場で行なった。

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