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BLM運動をめぐりアメリカの日本人・日系人がおかれている微妙な立場

状況によって黒人と白人双方から敵にも味方にも見られる存在の悩ましさ

賀茂美則 ルイジアナ州立大学社会学部教授・学部長

黒人以外の参加者が多いBLM運動

 今回のBLM運動がこれまでの運動やデモと大きく違うのは、参加者に非黒人が多いことである。黒人に対する不平等に辟易しているのは黒人に限らないし、また「人種差別」に抗議する運動という面だけではなく、「警察官による暴力の理不尽さ」に抗議する参加者が多い、という特徴があるのだ。デモを取り締まるはずだった警官が、人種にかかわらず、膝をついて支持を表明するというケースも数多く、支持者の裾野が広いのだ。

 日本のメディアで報道されるのは、先鋭化し、暴動となった一部のデモばかりだが、全米2000以上の都市で行われている抗議運動の大多数は平和的なものだ。筆者にコメントを求めてきた日本のメディアがあったが、「バトンルージュでのデモは平和的なもので、石を投げた参加者に別の参加者から大きな抗議の声が上がったり、行進が終わった後でゴミを拾う参加者が多かった」というコメントは不採用であった。

拡大米ワシントンのリンカーン記念堂前で行われた人種差別に抗議する集会=2020年8月28日、ワシントン、ランハム裕子撮影

日本領事館が出した呆れた通達

 さて、日系人である。まず、フロイド氏を死に至らしめたのは白人警官だが、その場に居合わせた残りの3人のうち、1人はアジア系であった。タイとミャンマーに住む少数民族、モン族の出身であるが、アメリカでは日系人もモン族もひっくるめてアジア人である。まず、この事実だけでも日本人、日系人としてはデモに参加しにくくなる。

 呆れたのは現地の日本領事館である。曰く、「デモは危険なので絶対に近寄らないように」という通達が複数回来たのだ。一体何を基準にしているのだろうか。

 誰しも「表現の自由」というものがあり、デモに参加する権利もある。不確かな情報のもと、外出禁止令が出ているわけでもないのに、人種差別的な先入観に基づき、こんな通達をする神経が理解できない。外務官僚がこんな発想をする国の国民である以上、どんな誤解を受けるか分かりはしない。

黒人がアジア人や日系人に抱く複雑な感情

 さらに黒人が、アジア人、もしくは日系人に抱く感情にも複雑なものがある。

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筆者

賀茂美則

賀茂美則(かも・よしのり) ルイジアナ州立大学社会学部教授・学部長

1958年東京都生まれ。東京大学文学部社会学科在学中に1年間アメリカのワシントン州に留学。卒業後、総合商社「トーメン」にて鉱山開発、石炭輸入に関わる。退社後、シアトルにあるワシントン大学で社会学修士・博士号を取得後、現職。主な著書に、「アメリカを愛した少年:服部剛丈君射殺事件裁判」(講談社)、「家族革命前夜(イブ)」(集英社インターナショナル)。英語では社会学入門の教科書のほか、家族、高齢化、幸福論、階層、比較分析など広い分野で論文多数。アトランタ五輪以来、サッカーワールドカップなどのスポーツイベントにスタッフとして関わり、スポーツに関するコラムも多い。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです