自民党総裁選、衆院解散総選挙、野党の合流新党への影響は……
2020年08月28日
安倍晋三首相が持病の悪化による辞職を表明しました。まだしばらくは首相の職を続けるだろうというのがコンセンサスだったため、永田町や国会周辺でも驚きの声が上がっています。
この後の自民党総裁選や衆議院総選挙への影響について、今の時点で考えられることを緊急寄稿いたします。
まずはこの後、政治日程がどのようなスケジュールで進むのかを見たいと思います。
自民党は9月1日の自民党総務会で、今後の総裁選実施の方法などについて検討をするとしており、最終的な結論は二階俊博幹事長に一任されていると報道されています。9月末で現在の自民党本部の役員の任期が切れることから、それまでには自民党総裁を選出し、総理就任と組閣まで持っていけるかどうか、事務的なスケジュール調整を行っているとみられます。
総裁公選規程によると、総裁選は原則、党員投票によるものとされていますが、過去には小渕恵三首相が脳梗塞で入院(後に死去)した時や、第1次安倍政権の退陣、福田康夫首相の辞職の時のように、両院議員総会で決めた例もあります。ただ、今回は安倍首相が(新しい総裁が決まるまでは)引き続き首相の任にあたること、「政策論争をできるだけの時間はある」と表明していること、自民党の党員獲得運動が集中する時期だったことなどから、(一部報道では、都道府県連票と議員票による両院議員総会で総裁選出をする方向を目指すという党幹部談を報じていますが)首相の体調が数日で急激に悪化するようなことがない限り、党員投票による総裁選を行うと筆者は考えています。
自民党総裁選をするとなると、自民党の過去の総裁選は概ね告示から投開票による決定まで2週間をかけていること、依然コロナ禍が続いていること、そのために街頭演説の実施が非現実的であることなどを踏まえれば、9月の連休明け、23日ごろには、新しい総裁が決まるようなスケジュールで進むのではないのでしょうか。
その後、臨時国会が召集され、その冒頭で内閣が総辞職をし、衆参両議院の首班指名選挙を経て、9月末から10月頭には新しい内閣が成立するものと思われます。自民党の役員任期が9月末であることを考えれば、冒頭に書いたとおり、まずは9月中に組閣まで進められるようなスケジュールの進め方を模索する形での調整になるでしょう。
以上が総裁選の想定しうるスケジュールですが、今わかっている範囲で今後の展開をできる限り読みたいと思います。
首相は、辞職を表明した記者会見において、今回の病状変化について「6月の定期検診で再発の兆候が見られた」と説明しました。総理動静などをみればわかるように、麻生太郎副総理とは、その際から時には官邸で2人きり、あるいは私邸で2人きりで何度も面談を重ねてきたことから考えると、麻生副総理との間では、今回の安倍政権をどのように終えるのか、きちんと連携していたことは間違いないでしょう。むしろ、それ以外の党幹部が今回の辞職会見に驚いていることからすると、首相の胸中を知っていたのは麻生副総理だけだと思います。
今回、首相は臨時代理を置かず、新しい総理・総裁が選出されるまでの間、引き続き総理の任にあたると表明をしました。その一方で、これまでの薬に加えて点滴投与による治療をはじめたことも説明をしていたことから、最悪のケースとして、「麻生臨時代理」の想定も間違いなく検討していたでしょう。
そうなると、やはり麻生副総理との間には、安倍首相がどのように退陣するかというプランだけでなく、不在後の新しい総理・総裁による現政権の政策継承プランまで話をしているはずです。以上のことから、総裁選は、麻生・安倍ラインを中心とした勢力と、それ以外の勢力との構図を中心に展開されると思われます。
ここ数週間、安倍首相の体調不良が報じられてから、様々な動きが見られました。現在、総裁選への出馬の意向を明確に示し、かつ総裁選への出馬要件である推薦議員20人を確保できる見通しなのは、石破派の石破茂元幹事長、岸田派の岸田文雄政調会長、麻生派の河野太郎防衛大臣(五十音順)の3人でしょう。さらに、菅義偉官房長官や、西村康稔経済再生担当大臣、野田聖子元総務大臣、下村博文自民党選対委員長などの名前も挙がっています。
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