薬師寺克行(やくしじ・かつゆき) 東洋大学社会学部教授
東洋大学社会学部教授。1955年生まれ。朝日新聞論説委員、月刊誌『論座』編集長、政治エディターなどを務め、現職。著書に『証言 民主党政権』(講談社)、『外務省』(岩波新書)、『公明党』(中公新書)。編著に、『村山富市回顧録』(岩波書店)、「90年代の証言」シリーズの『岡本行夫』『菅直人』『宮沢喜一』『小沢一郎』(以上、朝日新聞出版)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
首相の側近が決めた政策を各省が実施。迅速、革新的になった政策の多くに成果乏しく
彼らは毎日、頻繁に首相に面会し、首相の意を受けて首相政策を企画立案していった。それは政権発足直後のアベノミクスの「三本の矢」に始まり、「働き方改革」「1億総活躍社会」などの経済政策、さらには拉致問題をめぐる対北朝鮮政策や北方領土問題を核とする日ロ交渉など外交・安全保障政策など、あらゆる分野に及んだ。
今年に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大をうけた学校の一斉休校や、「go to キャンペーン」など、一連のコロナ対策の多くが官邸主導だった。
当初、各省は官邸から次々と指示が降りてくることへの反発を見せていたが、官邸の方針に異を唱えた官僚が、「内閣人事局」の判断で冷遇されたり退官に追い込まれたりする例が続いたことから、次第に声を出さなくなってしまった。
その結果、かつては日本最大のシンクタンクと言われたほど情報と人材の宝庫であった霞が関の官僚組織は、ボトムアップで新しい政策を創り出すことを避けるようになり、徐々に官邸から降りてくる政策の実施機関という性格を強くしていった。
その一方で、もう一つの主体である自民党も変質してしまった。
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