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難病は「弱み」なのか? 潰瘍性大腸炎の政治記者が辞任表明に思うこと

問題の根は「財産」と捉えられない政治家の時代錯誤にある

松下秀雄 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長

安倍晋三首相が辞任を表明した会見が大型ビジョンに映し出された=2020年8月28日、東京・新宿拡大安倍晋三首相が辞任を表明した会見が大型ビジョンに映し出された=2020年8月28日、東京・新宿

 安倍晋三首相が辞任を表明した。

 記者会見で挙げた理由は、難病である潰瘍性大腸炎の再発だった。

 実は私も、同じ病をもっている。そして長年、政治を取材してきた記者でもある。そんな私がいま、どう感じているのかを記しておきたい。

 それは大要、次のようなことである。

 難病は、政治リーダーとしての「財産」になりえたはずだ。それなのに、安倍首相は自分の「弱み」のように思ってしまったのではないか……。

 問題の根っこは、その時代錯誤にあるように思えてならない。

「画期的な新薬」に感じたゴマカシ

 あらかじめ断っておくと、同じ病といっても病状はそれぞれに違う。そんなに深刻な状況を経験したことのない私に安倍さんの痛みはわからないし、病そのものについて論じられることは乏しい。

 強いていえば、2012年に自民党総裁や首相に返り咲くころから、画期的な新薬のおかげで病を克服できたかのような言い方をしてきたことについて、誠実さを欠く物言いだ、もっといえばゴマカシだと感じていた。いったん症状が消えても、いつまたぶり返すかわからない。完治が難しいから難病なのだ。

 とくにストレスがよくない。症状が治まっていても、ストレスだらけであろう首相に再びなれば、また悪化しないかと心配していた。長いあいだ再発を避けられたものの、結局は病気を理由に辞任することになったのは、同じ病をもつ者として残念でしかたがない。

 辞任するのであれば、やまほどあった不祥事の責任をとって、もっと早く辞めてほしかった。


筆者

松下秀雄

松下秀雄(まつした・ひでお) 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長

1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。22年9月から山口総局長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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