自民党を「キャッチオール型」から「普通の」政党に変えた安倍政権の8年弱
8年近く政権を維持できた理由 政策の評価 「左派パッシング」の真相
三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表
安倍総理の「堅さ」

辞任会見に臨む安倍晋三首相=2020年8月28日午後5時、首相官邸
安倍総理を見ていて思うのは、言動やその背景がよく理解できる、ということである。おそらくこの8年近くの間、日本で最も知名度が高く、最も毀誉褒貶の声を浴びせられてきた存在である。
良きにつけ悪しきにつけ、これだけ注目の対象となり続け、しかも政権を崩壊させないできたということは、それだけのものを背負い続けるための精神的なコツをつかんでいるということでもある。岸総理の孫という「血筋」の下地はあるにしても、世襲の議員がみな当然のようにできるわけではない。
安倍氏はすべてを包含しようとする人ではない。党派的であり、自分が取り込めない人にまで手を伸ばそうとするような過ちを、決して犯さない。政敵に対して、ときに仮借ない報復をし、権力維持に関しては徹底して冷徹である一方、側近からは高い忠誠心を勝ち得ている。
気さくな一面もあるが、ごく親しい友人以外には、ひやりとした一線を引いて接していて、閣僚のなかには、安倍総理が何を考えているのかわからないという状況も、頻繁にあっただろう。君臨するという点においては、自民党内でも内閣においても「堅さ」があった。
成立しなかったメデイアとの洒脱なキャッチボール
安倍さんは、記者会見などで自身の考えから外れた見解や質問が出されたときに、懸命にこらえて我慢しているという顔をすることがあった。そうした不快さをはらむ表情は、外遊で各国の首脳などと交流しているときには見られないものだった。それは、海外での明るい振る舞いの方が特別だったわけではなく、
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