2020年09月01日
この記事は、朝日新聞社の言論サイト「論座」が2020年8⽉29⽇に公開した吉⽥貴⽂編集長の見解『Dr.ナイフさんにSNS時代の言論についてご寄稿いただきます』に対する、Dr.ナイフの回答です。
「論座」編集部から依頼を受け、Dr.ナイフとして最初の記事『はじめまして、Dr.ナイフです。』を寄稿したところ、⼤きな反響があり、「論座」のコメント欄やDr.ナイフのツイッター上で多くの好意的な感想をいただきました。
一方ではツイッターのハンドル名で記事を書くことに対する否定的な意⾒も少なからずありました。
ハンドル名による記事執筆の是⾮に関しては、多数の⽅からご意⾒をいただいたように、編集部が本⼈確認をしている前提において、他のペンネームや芸名による寄稿と特に違いはないと考えます。顔や本名を公表せず各種媒体に執筆している例は多くあります。
また、論座の⾒解「筆者がどういう⽅であるかについて、できる限り読者の皆さまにお⽰しするのが論座の基本」に関しても、論座編集部から最初に「ツイッターで活躍しているインフルエンサー」として紹介いただいており、それで充分だと思いますし、編集部とは⾯談も⾏い、本名、職業、住所など個⼈情報も伝えています。
上記のことから、批判の理由である「正体不明のハンドル名による論座への寄稿」は誤解であり、改めて論座編集部として説明いただければ、読者の理解を得られると考えます。
それでもなお、Dr.ナイフの寄稿はNGだというご意⾒があるとすれば、それは例えば好き嫌いによる感情的な話であったり、朝⽇新聞社内の組織上の壁などが原因だと思いますが、それについては僕が関与することが出来ない領域であり、⾔及は避けたいと思います。
上記を前提に、僕が「論座」から寄稿の依頼を受けて、やりたかったことを少しだけ述べたいと思います。
最初の記事『はじめまして、Dr.ナイフです。』にも書きましたが、ツイッター上に存在する政治に対する様々な意⾒を取り上げ、「論座」の読者に伝えたい。
昨今の政治不信の中で、いまSNSには政治初⼼者というべき⼈の声がたくさん集まっています。その⼈たちは本当に政治初⼼者です。安倍⾸相が辞職したら野党が政権を担うと信じている⽅もたくさんいます。
僕自身がそうですが、政治に無関⼼だったため、かつての⺠主党政権に対する記憶が曖昧で、なぜ今でも⺠主党政権が批判されているかよく分からない。安倍さんの前の総理って誰だっけ?
論座で執筆されている⽅々には想像できないほど、政治に疎く知識も少ない。しかしいまこそ政治に関⼼を持たないと⽇本の将来は危ないと感じはじめた⼈たちです。僕のツイッターのフォロワーの多くは、そういう⽅々です。
⾼度な政治の話ではなく、政治初⼼者を含めた素朴な⼈々の声を拾い上げ、政治家を含めた政治専⾨家のみなさんに伝えたい。政治専⾨メディアとSNSとの架け橋になる。
これが論座で僕がやりたったことです。
僕がまさにそうなんだけど、少し前まで政治にほとんど興味がなく、選挙もサボることが多く、誰が総理大臣になっても同じだと思っていた人達が、今起きている政治の異様さに驚き、危機感を持ち、きちんと政治に向き合う人が増えた事は、もしかしたら日本にとって良かったことなのかもしれない。
— Dr.ナイフ (@knife900) July 26, 2020
Dr.ナイフへの執筆依頼の背景には、オールドメディア側の危機感があると伺いました。
論座を運営する朝日新聞社は、自分たちが時代遅れのメディアになることを危惧されている様子も伺えました。
僕の考えとしては、機能として各メディアにはそれぞれ役割分担があり、大きな予算と経験ある記者が、取材により一次情報を得る新聞などオールドメディアの強みは、そう簡単に崩れないと考えています。
一方、期待されているSNS、ソーシャルメディアにも大きな課題があります。
情報の分断です。
政治系のツイッターをしていたら実感できます。支持政党や思想によって見事なまでにユー ザーが分断されています。
当たり前の話です。気に入った人をフォローし、嫌な人をブロックすることを繰り返せば、自然と入ってくる情報は、自分にとって心地よいものだけになります。自分が見ている情報だけがすべての世界に陥り、偶然入ってくる異質な情報には、強い嫌悪感を抱くようになります。
「人は見たいものしか見えない。聞きたいことしか聞こえない」
本質をついた言葉だと思います。
ソーシャルメディアはこの現象を顕著化する一面があるのです。
そしてこの言葉を裏返せば「メディアは利用者を写す鏡」になります。
昨今言われているメディアの劣化とは、実はSNSで情報を分断された利用者の姿を映している鏡なのかもしれません。
読者がSNSの活動で、考えにフィルターがかかった状態で他のメディアの記事を読むと、同じ記事でも、読者によって全く違った捉え方になります。
新聞などオールドメディアとソーシャルメディアは別世界のものではなく、双方が深く密接につながっている時代です。
SNSユーザーに向き合い、彼らの考えていることやその背景を汲み取る。各メディアの重要な課題だと思います。このことを訴えて、今回の論座への意見としたいと思います。
ぜひ皆様にも多くのご意見を、この「論座」記事のコメント欄やDr.ナイフのツイッターへいただければ幸いです。みなさんのご意見も受けて、次回は「政治に対するメディアの役割と信頼性」について考察したいと考えています。
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