花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
政と官の関係の見直しこそが急務
8月28日、あの盤石と思われた安倍一強体制がもろくも崩れ去った。崩れる時は早い。今年初め、この事態を誰が予想しただろう。夏のオリンピックを華々しく開催、憲法改正にめどをつけ、衆議院の解散総選挙で再び大勝、花道を飾り余力を残して勇退する。その可能性は十分あった。志半ばで再び挫折の淵に沈むと考えた者はいなかった。
再びの挫折だ。第一次政権の時、在任1年にして病に倒れた。政権を放り投げるようにして辞任した。それが、総理の心の深い傷になった。2012年、再び総裁選立候補を決めた時、「再び挑戦するチャンスが与えられていい」とポツリと漏らした。遊説に向かう新幹線車内のインタビューでの発言だ。第二次安倍政権は、再挑戦としてスタートした。この発言こそが、その後7年8カ月にわたる安倍政権の原点だった。
政治は、権力をめぐる闘争だ。政治家は、誰もが権力を追い求め走り続ける。しかし、政治がそれだけであるとき、政治家は危険な存在でしかない。私益は公益が伴わなければならない。もう一つ、政治家には、公益のためのやむにやまれぬ思いがいる。心の底から湧き上がる高い志。それがあってこそ、この権力を求めて動き回る政治家という存在が正当化される。安倍総理にそれがあったか否か定かでない。ただ、第二次政権発足時、安倍総理に、毛並みの良さを思わせるサラブレッド臭だけでなく、課題に果敢に取り組もうとの強い意志が感じられた。何としても、との思いだ。再挑戦の原点から出ている。
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