習近平や安倍晋三との共通点は「カリスマの欠如」
2020年09月04日
政敵を葬り去るというのは、権力者がその権力を維持するためにとる政治の常道だ。ロシアのウラジーミル・プーチンがこの方法をとっているかどうかは不明だが、その可能性は高いと少なからぬ人々が思っているのではないか。
8月19日、シベリアのトムスクからモスクワに向かう飛行機内で体調不良を訴え、その後、重体のまま、22日にベルリンに搬送された、反プーチンの急先鋒、アレクセイ・ナヴァーリヌイ(ナワリヌイという日本語表記は使わない)をめぐって、何者かが毒殺をはかったのではないかとの憶測が広がっている。
プーチンにとって、ナヴァーリヌイは「天敵」のようなものだ。ナヴァーリヌイはプーチン政権の腐敗を執拗に暴露しつづけてきたからである。度重なる逮捕・起訴、有罪判決にもかかわらず、彼はいわば命がけで権力者プーチンを批判しつづけてきたのである。
ナヴァーリヌイ主導で2011年に設立された「腐敗闘争基金」は、プーチンおよびその取り巻きの腐敗を暴いてきた。とくに、2017年にユーチューブにアップロードされたドミトリー・メドヴェージェフ(当時首相)の腐敗に関する報道は世界中の人々を驚かせた。プーチンに比べて、比較的腐敗していないとみられていた彼が実は、「真っ黒」であることを白日のもとにさらしたのだ。
あるいは、2020年1月、メドヴェージェフに代えて首相に就任したミハイル・ミシュスチン連邦税務局長官についても、その腐敗ぶりを明らかにする動画をアップロードした。彼の宮殿のような住まいは、悪事なくしては不可能であることはだれにも明らかだろう。
こんな調子だから、プーチンがナヴァーリヌイを鬱陶しく思っていたのは確実だ。だが、プーチン自身がナヴァーリヌイ殺害命令を出したのかどうかはわからない。ただ、その疑いが濃厚であるとみなす者は多い。なぜか。これまでの状況証拠がそう推量させるからだ。
そこで、「表1 21世紀における形骸での殺害(未遂を含む)」をみてほしい。ここからわるように、チェチェンの独立のための武装闘争に参加した人物が何人も海外で殺害されてきた。最近でも、2019年8月に射殺されたゼリムハン・ハンゴシヴィリはジョージア人でありながら、チェチェン独立のために戦った軍人だった。
ほかにも、ソ連国家保安委員会(KGB)やロシア連邦保安局(FSB)を裏切ったとみなされたアレクサンドル・リトヴィネンコのような人物は、国家管理のもとにある放射性物質であるポロニウムを使って殺害された。同じく、KGB・FSBからみると、「裏切者」にあたるセルゲイ・スクリパリとその娘は高純度の神経剤、ノビチョクによって毒殺対象になった。
とくにリトヴィネンコ殺害については、
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