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コロナ危機の今、これでいいのか、自民党総裁選

指導者は厳しい選挙を戦い抜くことで支持基盤も発進力も強くなる

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

 自民党の総裁選挙は、予想された候補者が出そろい、9月8日に告示、14日に両院議員総会で投開票という日程で走り出した。うんざりするような退屈な選挙にならざるを得ない。

 候補は、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、そして菅義偉官房長官の3人。菅氏は既に岸田、石破両派をのぞく党内の大半から支持をとりつけ、“独走状態”に入っている。

拡大記者会見で自民党総裁選への立候補を表明する菅義偉官房長官=2020年9月2日午後5時24分、国会内

最も重要な権利を行使できない自民党員

 新型コロナウイルス危機と安倍晋三首相の病気による退陣は緊急事態であり、党員投票まで行う通常の総裁選挙を実施するのは無理だとして、自民党執行部は党則にある簡略な選挙方法を選んだという。端的に言うと、党員にとって最も重要な権利である総裁選での投票権行使が、「緊急」という理由で阻まれたかたちだ。

 これに対し、自民党内の若手、中堅議員は「広く党員の意見を聞くべきだ」と反発した。総裁選関連事項を決めるため、9月1日に開かれた自民党総務会には、小林史明青年局長、小泉進次郎環境相らが乗り込んで、党員投票実施に賛同する国会議員145人分、地方議員403人分の署名を手渡した。よくあるパフォーマンスにも見えるが、今度ばかりはそれにとどまらないだろう。

 なぜなら、今回の対応は緊急事態だからということよりも、岸田、石破両氏、とりわけ党員や国民に人気がある石破氏の想定外の伸長やブームを恐れているという見方が強いからだ。

総裁の選出過程には国民的関心が不可欠

 自民党の総裁選に限らないが、本格的で厳しい選挙を戦い抜いた指導者は、支持基盤も発進力もケタ違いに強くなる。コロナ危機のさなか、しかも歴代最長を記録した長期政権の突然の終焉である。いつもよりもさらに優れた指導者を選ぶ必要がある。願わくば、安倍首相を凌駕(りょうが)する優れた指導者の出現が待望されている。

 昭和30(1955)年の自民党結党以来、多くの総裁選挙が実施されてきたが、そのときの事情で選挙手続きが簡略であった総裁(そして首相)ほど支持基盤が弱く、首相になっても国民的な支持を集めることが困難だった。

 近くは小渕恵三首相の急死後の森喜朗首相、第1次安倍内閣の突然の退陣後の福田康夫内閣、そしてその福田内閣を引き継いだ麻生太郎内閣。その内閣が業績不足であったにせよ、それは首相一人のせいではない。選出課程に国民的関心や参加がなかったことに問題があった。それらがあれば、急な首相就任であっても、世論は温かく迎え、存分に力を発揮できるはずだ。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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