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若者の怒りがはじけた!権威主義と戦うタイ・香港・台湾のミルクティー同盟

タイの若者に何が起きているのか(上)

吉岡桂子 朝日新聞編集委員

王室改革を求める意見が公然と

――ネティウィットさんは、批判が今以上にタブー視されていた4年前、元国王の銅像の前でお辞儀をする儀式を拒みましたね。軍政や権威主義的な教育の問題にも批判を続けてきました。

 自分は以前、学生の中でも少数派の気分でした。いまは違う。中学生たちまで声を上げ始めている。タイの人々はもともと急進的ではないと思うけど、このままではタイがだめになる、と考える人が増えているのです。

 王室改革を求める意見が公然と出ていることには、私も驚いています。そういう意見は社会にあったけど、公然とは表現しなかった。でも、若者たちは、なぜ言っちゃだめなんだと考え始めている。もっと王室批判を強めたいという声もあるのです。学校によっては、生徒に対して抗議活動に参加したら退学させるというプレッシャーをかけていますが、それでもコントロールするのが難しくなっています。

 フェイスブックは実名で、年上の世代から特定されてしまうけど、ツィッターには匿名性がある。複数のアカウントをつくってハッシュタグで一気に主張を広げることができるから、今回の運動では多用されている。集会を警戒して、政府は警察を動員しているが、軍隊はまだ姿をみせていない。10月に向けて、さらに運動は広がっていくと思う。

拡大民主記念塔前で開かれた反政府集会は23時ごろまで約8時間も続いた。不敬罪のあるタイではタブー視されている王室批判もまじっていた=2020年8月16日、バンコク、吉岡桂子撮影

中国的なもの、非民主的な制度と戦う同盟

――「ミルクティー同盟」についてうかがいます。タイと中国の若者が今春、台湾や香港の位置づけをめぐってネット上で衝突し、タイ側の援護にまわった台湾、香港とタイのネットユーザーとの間に「ミルクティー同盟」と呼ばれるバーチャルなつながりができました。オレンジ色の甘いタイティー、台湾はタピオカ入り、香港は練乳で甘味をつけた濃い紅茶と、それぞれ名物のミルクティーを絆にした精神的な結びつきだそうです。バンコクの反政府集会で取材したタイ人の学生は、タイ、香港、台湾とも、権威主義と戦っている共通点があると話していました。

 ミルクティー同盟の出現にはとても驚いた。若い世代をひきつけるキュートなネーミングだと思う。インターネットから偶然に生まれた。中国のネットユーザーからの攻撃に立ち向かうタイと台湾、香港とのあいだに何か共通点を探そうとして、どこからともなくそう呼ばれるようになった、ときいている。ユーモアがあるでしょう。

 この同盟は、中国のイメージとは対照的。中国は強大で人口も多いけど、若者にとって魅力的ではない。そもそも、こんな同盟に対しても、中国は米国が背景にいるとか、いつもの陰謀論を言っているのですよ。中国政府は、国外でも民主運動が広がっていくのがいやなので、タイでは軍政を支持してきたし、(タイの若者による反政府運動についても)タイ政府側を支持するだろう。それがまた、われわれからすれば魅力的ではない。台湾がコロナの対応をはじめ、LGBTや人権の問題などで魅力的に映るのと対照的です。

 大事なのは、

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筆者

吉岡桂子

吉岡桂子(よしおか・けいこ) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。1989年に朝日新聞に入社。上海、北京特派員などを経て、2017年6月からアジア総局(バンコク)駐在。毎週木曜日朝刊のザ・コラムの筆者の一人。中国や日中関係について、様々な視座からウォッチ。現場や対話を大事に、ときに道草もしながら、テーマを追いかけます。鉄道を筆頭に、乗り物が好き。バンコクに赴任する際も、北京~ハノイは鉄路で行きました。近著に『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』(https://www.amazon.co.jp/dp/4093897719)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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