松下秀雄(まつした・ひでお) 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。22年9月から山口総局長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
首相が代わるいま、見つめ直したいこと
米国などの退役軍人らがつくる「Veterans for Peace」(VFP)という団体がある。
ここ数年は毎年、メンバーが日本を訪れて各地で講演している。みていて印象に残っていることのひとつが、広島・長崎への原爆投下や各地の空襲をわびる姿である。
彼ら彼女らは、イラクやベトナムに派遣された経験はあっても、日本への原爆投下や空襲にはかかわっていない。昨年秋に来日した元米海軍看護師、スーザン・シュノールさんの場合は、海兵隊員だった父親を旧日本軍に殺されている。それでも彼女は「米国の市民を代表して、みなさんに深くおわび申し上げる」と述べ、黙禱をささげたのである。
翻って、政治家はどうか。
2016年、米国のオバマ大統領(当時)は広島を訪問し、慰霊碑に献花し、被爆者を抱きしめた。そのオバマ氏でさえ、謝罪の言葉は避けていた。
辞任を表明した安倍晋三首相も、謝ることを好まなかった。2012年に首相に返り咲いてから、全国戦没者追悼式の式辞では近隣諸国への加害責任に触れていない。それでも「歴史の教訓を深く胸に刻み」(2019年)とは述べていたが、今年は「世界をより良い場とするため」に変わった。
わびる元軍人と、わびない政治家。
この対比は、いったい何なのか?
たぶん、「戦争とは、平和とは何か」から考えないと、問題の根はみえてこない。それは「原発とは、事故からの復興とは何か」ともつながっている。
首相が代わるいま、「平和」と「復興」を見つめ直すために、VFPの話から始めたい。
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