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遅れる日本企業のサイバーセキュリティ対策

人材の不足は深刻化するばかり

塩原俊彦 高知大学准教授

 毎年、スイスのダボスで世界経済フォーラムが開催されている。2020年1月の会議で焦点があてられたのは、サイバーセキュリティ、デジタル技術、中東との連携などであったことを覚えている人は少ないだろう。

 サイバーセキュリティについては、「サイバーリスク評価:第四次産業革命における企業のためのワクチン」「サイバーセキュリティのリーダーが直面する4つの重要な課題」「グローバルリーダーはサイバーセキュリティに責任を持たなければならない:その理由と方法」「2020年の主要なサイバーセキュリティの動向」などが議題となった。ここでは、こうした世界の潮流から日本企業が大きく遅れをとっている現状について考えてみたい。

拡大世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)の最終日に行われた討論セッション=2020年1月24日、スイス・ダボス

まだWindows7を使っている?

 マイクロソフトは2020年1月14日、Windows7へのサポートを終了した。それまで同社は毎月1度くらいのペースで定期的にセキュリティバグ修正のための無料アップデートを提供してきたが、このサービスが停止されるため、これ以降、Windows7を使いつづけると、ハッキングなどのリスクにさらされることになる。

 にもかかわらず、同社によると、1月時点で、日本には1391万(官公庁や地方自治体で753万、家庭内で638万)ものWindows7を利用するコンピューターが存在した(Kyodo News2020年1月14日付)。これは日本でWindowsを活発に使用している全コンピューターのほぼ2割にあたる。つまり、全般に日本人のサイバーセキュリティへの意識は低いと考えられる。

 ただし、これだけでは、日本企業のサイバーセキュリティへの関心が低いとは言えない。その問題意識の低さを端的に示しているのは、米国やシンガポールの企業の90%近くが情報セキュリティ担当の最高責任者を任命しているのに対して、日本の企業では半数近くが任命していないという調査結果である(とはいえ、この情報源はこの調査の具体的な実施先や詳細な内容を明らかにしていない)。企業のトップが率先してサイバーセキュリティに取り組むという明確な姿勢を示さなければ、会社全体としてしっかりしたサイバーリスクへの備えなどできるわけがないのである。


筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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