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強権体制下でコロナ感染対策は治安問題、強まるメディア統制

[1]見えにくい新型コロナの蔓延、コロナ禍に便乗した新聞発行・販売禁止

川上泰徳 中東ジャーナリスト

イスラエルの実態から見えるコロナ禍

 中東で人口10万人当たりの確認陽性者の多さでは、湾岸諸国の後に来るのはイスラエルの1438人で、熱心にPCR検査を行っていることがうかがわれる。人口は870万人に過ぎないが、死者は988人と比較的多い。

 ネタニヤフ政権は3月下旬に非常事態宣言を出し、自宅から100メートル以上離れる外出を禁じるなど厳しい措置をとった。それによって一時新規感染者は減少し、5月初めに「封じ込め成功」宣言を出し、規制緩和に転じたが、7月にまた感染者が増加に転じた。厳しい規制で失業率が24%に達するなど国民生活への影響は大きく、7月にはネタニヤフ首相のコロナ対策の失敗を非難するデモ隊と警官隊の衝突が起こった。ネタニヤフ首相はコロナ対策では厳しい批判を受けている。

イスラエルのネタニヤフ首相の公邸前に集まり、退陣を求める若者たち=2020年7月16日、エルサレム拡大イスラエルのネタニヤフ首相の公邸前に集まり、退陣を求める若者たち=2020年7月16日、エルサレム

 中東のコロナ状況を考えるのに、イスラエルの数値は参考になる。中東では欧米並みの検査システムや医療レベルを有する国であり、政府の政策を監視する民間のメディアも機能していることから、コロナの実態が見えやすいためだ。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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