藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
石破氏は「納豆餅」、岸田氏は「冷凍の透明人間」と低調さに苦言。野党新党にも注文
――菅氏は多くの派閥から支持され優位に立っていますが、バケツのふたというのは、どういう意味ですか。
主婦の感覚です。安倍政権では例えば森友問題で公文書の改ざんがあったり、財務省の職員が自殺したり、でもその責任をあいまいにするうそとはぐらかしがたくさんあって、国民の不満も募っていた。なのにそうした悪臭紛々とした生ゴミを安倍家の台所から出して、バケツに押し込める。そのふたをするのが菅政権の役割ではないかということです。
歴代最長になった安倍政権が終わったら、やるべきは検証、分析をして改善することなのに、官房長官でずっと臭いものにふたをしてきた菅さんが次の首相になって、できるわけがないでしょう。役所の縦割りの打破とおっしゃってますが、理念がないだけに安倍政権よりも一層人事で官僚を締め上げる、もっと暗―い強権政治になりますよ。
――なぜこうした自民党総裁選になるのでしょう。
これまでの自民党政権や、政権交代で一時政権を担った民主党の責任もあるでしょうが、一番は安倍晋三首相ですね。政権のいろんな懸案を抱えながら、いきなりみんな投げ出すわけだから。党員投票などせずに、さっさとどう引き継ぐかという話になってしまう。
その長く続いた安倍政権の下で自民党が劣化したこともあります。かつては派閥が政策を掲げて領袖を次の首相にと争ったものですが、つきあいのあるベテラン議員に聞くと、安倍政権しか知らない若手はそうした切磋琢磨が理解できず、どう動くか想像もつかないと嘆いています。
また、そうしたベテラン議員たちも地盤を子供に継ごうかという年齢になっています。そのためには自己保身。与党であり続け、党から政治資金と選挙区で候補者となる公認をもらい続けることが大切になる。政策論争より、党内で争う場合ではないと考えがちです。
でも、本当はコロナ対策一つとっても、医療や経済、金融の分野で日本の指導者が世界にどう発信し、協力するかで国際レベルにならないといけない。そういう議論が必要なのに、この自民党総裁選はお粗末すぎる。国民の不幸ですよ。
――かつて田中さんが見た自民党総裁選と比べてどうですか。2001年には当選した小泉さんの推薦人になり、「私は『変人』の生みの母です」と支えました。
田中角栄の家族として私が見ていたのは、1972年、佐藤栄作首相の長期政権が終わって父が福田赳夫さんと争った「角福戦争」と、74年に金権問題で父が首相を辞めるときの椎名悦三郎副総裁による「椎名裁定」の時です。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?