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「女性は政治に向かない」という無意識の偏見は新型コロナで覆されるか?

コロナ後の「新しい政治」は男性と女性のギャップを埋めるのか

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

「何百万もの人が私を嫌い」と書いたヒラリー

 しかし、現実には政治の世界は「男の世界」と言っていい。女性の参入を阻む壁が厳然としてあるのだ。

 世界で初めて、ニュージーランドの女性が参政権を獲得したのは1893年。アメリカは1920年。ちょうど100年前だ。そのアメリカでは4年前、初の女性大統領が誕生するかと思われたが、ヒラリー・クリントンは選挙に敗れた。

 彼女は自分が大統領に向いているし、いい大統領にもなれると信じていたから、敗北にうちのめされた。そして、敗北の冷静な分析を書いた著書「WHAT HAPPENED」の中で、「何百万もの人が私を嫌いなのだという結論に達した」と書く。

 確かに、ずっと男性のポジションだったものを奪いかねない女性には、抵抗が待ち受けるだろう。男性同士だって凄まじい権力闘争が起きる。アメリカという世界の大国のトップであればこそ、小国とは違う権力争いがあるのかもしれない。

 とはいえ、政治家は嫌われるのが普通である。どんな政策も全ての人に受け入れられるわけではなく、賛成反対、さまざまな意見とそれに伴う利害があるから、嫌い憎む人がいるのは仕方がない。そこで反対者にも利害の対立する人にも、十分ではないが、何分か納得できそうな策を講じて全面的に敵にしない、人を追いこまないということも、政治には必要になってくる。

 支持率は政治家や政党が大いに気にするものではあるが、好かれているか嫌われているかを気にしていてはやっていけない気もする。ヒラリー・クリントンの言うように、ほんとうに女性が権力を握ることを人々は嫌っているのだろうか。

 「ガラスの天井」と言われる見えない壁を突き破って、初の女性のアメリカ大統領になってほしいと私自身ももちろん期待していた一人なのだが、彼女が敗れた理由の大きなものは、働いても働いても食べていくのが精一杯という労働者と、額に汗しなくても金融資産を動かして大儲けをしているウォール街に代表される人々との格差が拡大するなかで、ヒラリーが後者の人々に繋がっているとみられたことにもあると思う。

カマラ・ハリス副大統領候補に期待

 今また、コロナの感染拡大のなか、アメリカではさらに格差が広がっている。黒人、ヒスパニックの感染率は高いが、こうした健康格差の背景には、医療格差だけでなく、住宅格差や経済格差がある。彼らの多くはテレワークのできない運送業務、スーパー、病院、老人ホームなどでエッセンシャルワーカーとして働き、感染リスクが高い。ロックダウンと休業で勤めていた会社が倒産し、失業したケースも少なくない。

 アメリカは、欧州では廃れたチップ制がいまだに残っていて、ウェーターなどのチップ労働者は一般労働者よりさらに低い最低賃金で働いていたが、今回のコロナで真っ先に首を切られた。

拡大バイデン前副大統領の応援演説に立つカマラ・ハリス上院議員=2020年3月9日、米ミシガン州デトロイト、藤原学思撮影

 こうしたなか、「黒人の命が大事」というBlack Lives Matter運動がおこり、民主党のバイデン候補はカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に指名した。

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筆者

円より子

円より子(まどか・よりこ) 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

ジャパンタイムズ編集局勤務後、フリージャ―ナリスト、評論家として著書40冊、テレビ・講演で活躍後、1992年日本新党結党に参加。党則にクオータ制採用。「女性のための政治スクール」設立。現在までに100人近い議員を誕生させている。1993年から2010年まで参議院議員。民主党副代表、財政金融委員長等を歴任。盗聴法強行採決時には史上初3時間のフィリバスターを本会議場で行なった。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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