課題山積の日韓関係、「大人の余裕」も必要では
2020年09月12日
「『韓国たたき』主導の安倍首相が辞任へ 韓日関係好転なるか」
韓国の通信社・連合ニュースがこう速報したのは2020年8月28日夜のことだった。
韓国の政権やメディアにとって、安倍晋三首相といえば日韓の長期にわたる膠着状態を招いた張本人であり、首相が交代すれば、目下の主な課題である「徴用工への賠償」「半導体素材輸入規制」「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の続行」といった諸問題が一気に解決に向かうのではないか、と期待を込めたものだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権の与党「共に民主党」の崔芝銀(チェ・ジウン)報道官もその日のうちに「(日本の新政権と文政権は)韓日の交易と経済のためにも、対話と疎通が持続的に行わなければならない。日本政府のより前向きで責任ある姿勢を期待する」と論評。野党「未来統合党」の金恩慧(キム・ウネ)報道官も「新首相は、韓日関係により前向きな視線で臨むことを願う」とコメントした。
その期待の色が褪せていくのはあっという間だった。
文政権に比較的近いハンギョレ紙は、安倍首相の1時間にわたる辞任記者会見を分析する記事の中で「独特の歴史修正主義を前面に出し、韓日関係を荒波の中に追い詰めた安倍晋三首相が…(略)…長い政権を終える意向を明らかにした。〝史上最悪〟と評される韓日関係の未来にも大きな影響があると予想される」としながらも、こう続けた。
「(会見の中で)韓日関係への特別な言及はなかった。…(略)…日本の記者たちも韓日関係については質問しなかった。これは、安倍首相の突然の辞任と新型コロナ危機対応などにより韓国に対する関心が相対的に低くなったことを傍証する」(同紙電子版から、以下各メディアの引用も電子版を中心に)
このハンギョレ紙の見方は正しいといえるだろう。1時間の中で日韓関係の優先順位は確かに低いし、何よりも日韓関係の悪化がどん底に張り付いたまま動きもないし、質問したところで建設的な答えが返ってくるとも思えないからだ。
総裁選がスタートする前から後継候補は菅義偉・官房長官、石破茂・元幹事長、岸田文雄・政調会長の3人に絞られ、有力派閥がこぞって菅氏を推すことが分かると、韓国側はさらにトーンダウンしていった。
安倍政権の路線を全面的に継承する姿勢を示した菅氏に関して「菅氏は安倍首相の分身?」(中央日報、9月3日)といった見出しが目立ち、日韓関係の好転を求めるのは難しいという雰囲気に満ちてきた。
首脳外交の表舞台に出ずっぱりだった安倍首相に比べて、菅氏は韓国で「政権スポークスマン」としての顔以外は、ほぼ知られていない。むしろ、韓国メディアは、政権や安倍氏の代弁者として「問題発言」を強調するステレオタイプの報道が目立った。一方で、菅氏のビジネスライクでクールな物言いは、韓国に歓迎されないことも多かった。
例えば2014年1月、中国が韓国の依頼を受けて黒竜江省・ハルビンに安重根(アン・ジュングン)の記念館を建てた時。安重根は日本による朝鮮半島植民地支配の前夜(1909年)、初代韓国統監の伊藤博文をハルビン駅で銃殺し、死刑となった。朝鮮民族独立活動家として韓国で「義士」と呼ばれ絶大な人気がある。
菅氏は記念館が完成したことについて「極めて残念で遺憾。(安重根は)死刑判決を受けたテロリストだ。韓国・中国が連携した動きは、地域の平和と協力関係の構築に資さない」と批判した。
この「テロリスト発言」に韓国側が鋭く反応し、「日本の帝国主義時代に伊藤博文がどんな人物だったのかを振り返れば、官房長官発言はありえない。安重根義士は我が国の独立と東洋の平和のために命を捧げた」と反論した。
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